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IT関連企業は、意図せざる在庫積み上げとなっているか。

鉱工業生産指数(経済産業省)の業種別指数のうち、電子部品・デバイス工業(IT関連)の在庫率が5月から7月にかけて急上昇している。7月の数字126.5は、前回の景気の山である2000年10月の103.8を遥かに上回っており、この在庫の積み上がりを背景にIT産業を中心とする景気後退論が良く聞かれるようになった。日経紙では週に何度もこれが取り上げれており、このことが足許の株価低迷に寄与していると考えている。

小生自身の考えをまず表明すると、IT関連産業に一時の勢いが衰えたことは事実であるが、意図せざる在庫積み上げになっているため、今後在庫調整に入るという論はやや行き過ぎであろう。日経平均株価指数は、IT産業の株価に左右されるため、4月の高値から下落していることは仕方ないが、11,000割れは行き過ぎと考えている。

話を戻そう。電子部品・デバイス工業の在庫率の上昇には統計の齟齬が存在する。品目別で見ると、当該数字の中にカラーテレビブラウン管があることが問題。カラーテレビブラウン管のウェートは17.1と電子部品・デバイス工業の502.4に比べて高水準である2000年基準が使用されている。時代はカラーテレビから液晶テレビに移っており、本来であればウェートが変更されるべきであるが、これを行っていない。このカラーテレビブラウン管を除く、在庫率を描けば、巻頭に記載した電子部品・デバイス工業の在庫率は、2000年10月の水準を下回っている。また、カラーテレビブラウン管以外でも技術革新に伴い、必要性が少なくなったものが、出荷が減少する形での在庫が積みあがっているケースがあるだろう。これは意図せざる在庫とは呼べるものではなく、現状の市場は過剰反応をしていると考えている。

但し、懸念材料がない訳ではない。7月機械受注において、船舶・電力を除く民需が前月比▲12.1%と予想を大幅に下回る水準であったことから、先行き設備投資計画の下方修正が懸念される。IT関連においては、8月北米半導体のBBレシオは分かれ目である1.0に低下したことも懸念される。この点から、今年1~3月時点と比べて、成長率が鈍化していることは間違いないだろう。しかし、前回のITバブル期においてはIT企業のみが景気を支えていた面があったことに対して、今回は裾野が広がっており、足許では素材産業が景気を支えている為、それ程深刻なものにはならないと楽観視している。

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3度目の利上げのFOMCも来年には政策を変更するか。

米国FOMCは9月21日に政策金利であるFF金利を0.25%引き上げ、1.75%とすることに決定。

エコノミスト94名中92名がこの結果を予想していたことより、全くの予想通りの結果となった。『一部に共和党員であるグリーンスパンFRB議長がブッシュ政権に配慮し、大統領選挙直前の今回は見送るとの観測があった』(日経紙)という記載が見られたが、中央銀行が政治から分離されなければならないとの原則は何よりも優先されるということを議長が充分認識していることを知らないのであろうか。エコノミストの予想が圧倒的であるにも関わらず、経済専門紙に不勉強な記載があることは甚だ遺憾で、日本の国民が正しい判断ができないのも無理もないだろう。

さて話を戻すが、同日発表されたFOMCの声明文は前回8月のそれを踏襲した内容。相違点は景気に対してやや前向きとなったことと、物価上昇率がやや低下傾向にあるとの指摘であるが、何れも足許で発表された経済指標を追認したに過ぎず、新味に欠けた。尚、”慎重なペースで利上げできる”との従来の表現が残された為、少なくとも次回11月のFOMCで0.25%の利上げが決定されるとの見通しとなった。

年末のFF金利が2・00%または2.25%(年内FOMCあと2回)になるという点においては市場のコンセンサスはできているが、問題は2005年以降の金融政策がどうなるかということで、その後も引き締めを持続するという派と、その水準で一旦様子を見るという派に分かれている。日経紙は『3~4%を目指して今後も0.25%刻みの小幅な利上げを繰り返す方針を堅持』とどうやら前者派らしいが、小生は後者派(あくまでも現時点の経済情勢で判断してのことですが)です。理由は以下に箇条書き。

1.FF金利2%に達すれば実質金利(=名目金利-物価上昇率)がプラスに転ずる為、緩和的とは言えなくなる
2.物価上昇率2%割れの水準は歴史的な低水準でインフレは沈静化している
3.GDP3%弱の水準は潜在成長率とそれ程変わらない水準で利上げをきっかけに潜在成長率を下回る危惧がある
4.懸念材料の原油は来年前半までWTIで40ドル台で推移するとの指摘がある
5.北米BBレシオ(半導体需給を示す指数)が分かれ目の1.0に低下している等、景気の陰りが見受けられる
6.財政赤字拡大が問題となっており、財政赤字縮小に取り組む政治課題から金融政策はやや緩和的になる

自分の予想が優れているとは思わないが、日経紙の記事を読んで惑わされている個人投資家も多いことだろう。

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日本のGDP下方修正に悲観する必要なし

9月10日に発表となった4-6月GDP2次速報値は、1次速報値の時点で予想されていた上方修正とはならず、逆に前期比年率+1.3%(1次速報値+1.7%)下方修正される結果。最近、ヘッドライン(見出し)・トレーディングの傾向が強い傾向があり、このGDPにおいてはエコノミスト等の予想が+2.9%平均(+3%台前半の群と+2%程度の群に割れていた)であったため、これを裏切ったことから、景気悲観論が台頭している。

しかし、私は中身を良くみるべきだと考えています。既に新聞報道等でも指摘されていることですが、下方修正の要因は民間在庫寄与が低下したことと、公共投資の減少が主たるものです。民間在庫寄与の減少は、足元の景気情勢の悪さを反映しているとも取れるが、『将来(秋口頃)の景気鈍化に備えて、早めに在庫調整を行った』ということであろう。つまり、足元の景気を過大評価していたという面は否めないものの、その分、将来への不安が解消しているということで大きくシナリオ変更が必要であるという訳ではないのではないかと考えている。

一部に電子部品・デバイス(IT関連)の在庫の積み上がりを危惧する声がある。しかし、これはITバブル崩壊時を経験則とする必要以上の悲観論と考えている。当時と異なることが多いことに目を向けるべきだろう。IT企業だけではなく、素材系(鉄鋼・化学)などは収益が絶好調である上に在庫が極めて少ないし、先の日銀短観においては、大企業製造業だけでなく、中小企業や中堅企業までがDIプラスとなる裾野の広さであった。更に、中国経済の存在である。中国経済はバブル発生しており、早晩失速することは否定しないが、ソフトランディングする可能性があり、完全な市場経済でない(特に為替管理政策)ことが日本の失敗を回避する有望な点として挙げられよう。

現状の為替の位置(110近辺)が持続すれば企業収益は上方修正される。少なくとも現状の株価はこの点を織り込んでいないと考えている。

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米国8月雇用統計でFOMCで再利上げ

先週末、米国の8月の雇用統計が発表された。失業率5.4%(前月比▲0.1ポイント)と2001年10月(5.4%)以来2年10カ月ぶりの低水準。非農業部門就業者数は+14万4000人(市場事前予想+15万人)とほぼ予想通り。同就業者数は7月が7万3000人増、6月が9万6000人増にそれぞれ上方修正。 

前月のこの指標が発表された時の記事のコメントにも記載したが、非農業部門就業者数はヘッドラインに記載される“事業所調査ベース”の他に、“家計調査ベース”がある。家計調査ベースで見れば、米国の雇用改善は継続されてきたが、今回の発表でその齟齬は多少修正されたようだ。市場は9月21日の次回FOMCにFF金利0.25%引き上げを予想し始めるであろう。この点から考えれば、先行き経済を悲観的に見ていた市場が、やや楽観的な見方をしているグリーンスパンFRB議長に歩み寄ってきたという所であろう。

非農業部門の家計調査ベースの数字で経済を見れば見誤るとのレポートをメリル・リンチ証券のエコノミストが出したそうだ。その内容を確認していないが、きっと多くのエコノミストや市場関係者はそのような考えなのであろう。しかし、日本でも見られるSOHO(Small Office Home Office)でのビジネス拡大で、従来の雇用環境は変化してきている。企業も経費圧縮のアウトソーシングを増加させていることもこのビジネスの拡大の助けとなっている。企業の解雇により、SOHOビジネスに参入し、収入源となる人もいるであろうが、全体の経済活性化につながる面が大きいと考えている。企業内でいるよりも、個人事業で色々な企業に対して同種のサービスを提供した方が全体の効率性は高まる。経済の効率が上昇するならば、経済は成長し続けられる。このようなことがグリーンスパンFRB議長の頭の中にあるのではないだろうか。

日本の株式市場もそろそろ、下値を叩くことを辞めた方が良いように思っている。

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