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円高シナリオの修正

前回記載の『米大統領選挙後の相場考察』で、円高シナリオを提示したが、これを否定する材料が出てきたため、その点を纏めたいと思う。

一番大きなものとして挙げられるのは、11月5日発表の米国雇用統計が雇用の回復を示したことにある。夏場の数字が改定されたこともあり、非農業部門雇用者数(事業所調査ベース)において、8月+19.8万人、9月+13.9万人、及び10月+33.7万人(予想+17.5万人)と失業率を低下させる基準と言われる月当たり+15.0万人以上を概ね3ヶ月連続(9月はハリケーンの影響で下回ったが)で上回ったと言える。通年、秋口から冬場にかけ、米国企業はその年の決算(決算期末を12月としている所が多い)直前に、リストラを実施する所が多く、秋口の雇用は減少することが多い。2003年時には、景気回復に比して雇用回復が遅れたことから“雇用無き景気回復”等と言われたこともあった。今年においては、ハリケーンが多く発生し、この復興需要が雇用回復に寄与している。一時的な要因との見方もあるにはあるが、小生は、クリスマス商戦を前に雇用が回復したことが、米国の景気減速が一時的でかつ軽微なものに止まる可能性が高まったと考えている。

米国の景気の先行きが堅調であるとの見方が強まったこともあり、米国長期金利が上昇傾向となっている。一時は4%を割れていた米国10年国債利回りは4.2%台に上昇している。一方、日本の金利はGDP等の経済指標が軟弱であったことを受け、1.4%台と今年度の下限水準に止まっている。米国景気減速による米国金利低下が日米長期金利差を縮小させてきたが、今月に入ってからこれが拡大傾向に転換した。金利差縮小を背景に外国人投資家は日本の国債への投資を拡大させてきたが、今後は金利差が拡大してきたため、この点からの日本市場への資金流入が減ることとなる。本邦投資家にとって、日米金利差拡大は相対的に米国債投資が有利になることとなるため、対外投資拡大につながる。現在の日米金利差2.8%弱は平均よりも縮小した位置であるため、極端なドル買にはつながらないであろうが、少なくとも今までドル売を加速させていた状況からは一変したと言えるのではないだろうか。

米国貿易赤字で、対中国赤字が突出している。このため、ドルは対元に対して安くならなくてはならず、中国に対する圧力の為、円高にするとの国際政治的な思惑がある。中国は、元をドル・ペッグ制(ドルと一定幅範囲内に収める制度)で実質的に元安ドル高の位置に置いているが、これを早々に撤回するのではないかと言われ始めている。しかし、中国の立場に立つと、ペッグ制の廃棄は、急激な元高を招くため、野放図に受け入れることはできない。このため、最近では保護貿易主義的な立場が目立つ。元高になったとしても中国の市場開放が不十分であれば、米国の対中国赤字は削減されない。この点を考慮すると、元高のみを目指している訳ではないと考えている。中国以外の世界の国々の政治的な思惑は、元高のプレッシャーを与え、実は更なる市場開放を迫るというものではないだろうか。市場開放されれば、通貨の開放は必然的に必要となるものであり、それこそが大事ということであれば、方向性としてのドル安は必要だが、これが急激である必要はないとの考え方に立つ。

以上を踏まえると、円高方向ではあるものの、急激な円高に至ることはないと考えている。このため、先に急激な円高懸念から売り込まれた日本の株は買い戻し方向になると考えている。

(間隔が随分、空いてしまった。最近、レンジ内の動きが続いており、ややつまらない市況であったため)

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