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『週刊!木村剛』への突っ込み再び

[木村剛のコラム] 整合性欠く日銀の量的緩和に対するコメントを記載する。木村剛氏に何の恨みもないが、記載ネタに困っているにことが理由である。

『そういう中で、いよいよ大銀行がこぞって中小企業貸出に目覚め始めた。これまでは、絶対に手を出そうとしなかったベンチャー企業にまで驚くばかりの低金利で貸し出す事例が散見されている。2002年秋に(金融担当相の)竹中プランが策定された当時には、「中小企業に資金需要はない」と断言していた大銀行が、しかもベンチャー企業にまで貸し出し始めたという現状に一種の感慨を覚える向きも多いだろう。』

上記、木村剛氏のコメントについて、小生の意見を記載しようと思う。
木村剛氏のコメントによると、中小企業に大銀行が資金提供を行うようになったのは、金融の正常化したためということである。しかし、小生は、“BIS規制バーゼルⅡ(2006年12月導入)”が銀行のスタンスを変えたと考えている。現在のBIS規制において、貸出金は全てリスク・ウェートが100%であった。しかし、バーゼルⅡにおいては、貸出金がそのリスクにおいて100%から低減されることとなった。担保付の貸出、引当金を積み上げている貸出、及び小口分散された貸出は、これら以外の貸出金と比べ、リスクが小さいことを受け、リスク・ウェートが下げられるということがポイントである。

最近、どの銀行も住宅ローンに力を入れている。住宅を担保にしているため、無担保貸出よりもリスクがもともと少ない上、日本人は家を守る意識が強く、債務不履行が極めて少ない。住宅ローンのリスク・ウェートは50%に引き下げられる。つまり、現在使用している自己資本で2倍の貸出か可能になるということになる。このため、利鞘を縮小(ローン金利の引き下げ)させてでも貸出を増大させようとしていることが背景にある。

中小企業向けの拡大も同様で、標準的手法においてリスクウェートは75%に引き下げられる(内部格付手法ではこれ以上の引き下げとなる可能性がある)。現在使用している自己資本で1.33倍の貸出余力が生まれるということである。これらが、木村剛氏指摘の中小企業に大企業が資金提供を行うようになった背景である。以上を考えると、木村剛氏経営の“日本振興銀行”の先行きは厳しいかもしれない。金融においては、制度変更で経営環境が激変することは良くある。そのことは、不良債権の専門家たる木村氏自身も認識していたはずであろう。この点を踏まえて、日本振興銀行の先行きがどうなるか注目している。

スペースが余ったので、量的緩和の解除について代弁しておこう。現在、量的緩和解除を行うことは、日銀が約束を破ることになる。当座預金残高の下限を低下させることが、日銀の約束違反になるとは必ずしも言い切れないが、世論に納得感がない現状での実施は、『約束違反』との謗りを免れることはできないだろう。さて、日銀の約束とは、『デフレ脱却(消費者物価指数が安定的にプラスになる)まで、量的緩和を持続する』というものである。小生はこの約束を守ることは重要と考えている。日銀が約束したことを損なうことは、日銀の実施する政策の信頼性が失われることに他ならないことが理由である。

しかし、量的緩和を持続することに弊害がないわけではない。1980年代後半、円高を背景に消費者物価指数は安定的である一方、土地、株式等の資産インフレが発生した。日銀はこの状況下で公定歩合を2.5%という当時としては極めて低水準の位置に長期間放置したため、バブル経済と呼ばれる資産インフレ加速を生み、その後この反動で失われた10年と呼ばれる長期低迷状況に入ったことが思い起こされる。現在、円高等を背景に消費者物価指数のマイナスが持続しており、土地の上昇はないものの、株式やReitに代表される不動産金融商品の価格上昇は著しい。この状況を放置していた場合、1990年代と同様の反動低迷が危惧される。この点が量的緩和持続における問題点として掲げられよう。

量的緩和を即時辞めることへの弊害として指摘できることとして、小渕政権時に膨張させた財政赤字の問題がある。量的緩和に守られて、財政赤字が長期金利上昇を加速させることはないが、デフレ脱却が確実視できない中で、同政策を転換した場合、長期金利を上昇させ、デフレ脱却を困難にするという問題点がある。(前にクラウディングアウトと指摘した)

以上の諸々の要因を踏まえると、安易に量的緩和解除(当座預金残高の下限引き下げ)をできないと考えている。まあ、何もしなくても良いという訳ではなく、少なくとも長期金利の市場性回復により、長期金利の弾力性を利用することが現実的と考えているのは従前の論通り(何度も記載しているので敢えて何かは言いませんが)。


一般の方にはマニアックな話題だったかもしれない。但し、これらの問題点を知ることは今後の日本経済の行く末を占う上では重要であろうと考え、記載した。図表なしの文章でこれらを理解することは困難であろうが、何かの機会にご自身で紐解いて頂ければ幸甚と存ずる。

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GDPも、BBレシオ(北米)も全く無視の本邦株式市場

16日発表のGDPは3四半期連続マイナス、米国17日(日本18日8:00)発表の1月北米半導体製造装置BBレシオが0.80(先月0.94)に急落。何れも足許の景況感の低調さを示す指標であったが、18日の日経平均株価指数は11,660.12と年初来高値で終了した。

株式の上昇については色々と解説されているが、象徴的なものとしてライブドアによるニッポン放送買収の動きがあると考えている。2006年度より、外資による持ち株方式の企業買収が認められるようになるため、2005年度は各企業がM&A対策に迫られるという所が心理的に株価を上昇させているのではなかろうか。ポイントを箇条書きすると、

1.企業の現時点の資金使途は非効率的であり、これを効率化すれば株価の上昇余地がある、と言えるか否か
2.企業の株価の上昇余地があるとして、上昇幅がどの程度か
3.そのような企業群がどの程度あり、全体の株価をどの程度押し上げるか

という当たりが、この相場の持続性のポイントとなろう。冒頭のファンダメンタルズを無視して株式市場が上昇する様は、”バブル相場”の様相となっているが、『株価上昇→可処分所得の上昇→個人消費の上昇→企業業績向上』との正の連鎖の可能性があるため、小生は比較的前向きに捉えることとしている。


冒頭ファンダメンタルズ面の分析も行っておこう。

日経紙によると、GDPのマイナス成長は個人消費が『暖冬の影響による一時的な落ち込み』が主因ということらしい。暖冬で冬物衣料の販売が落ち込んだだけでマイナス成長になったことが真実であったとしても極めて脆弱だと言えるが、別の理由があると考えている。以前も記載したことであるが、社会保険料の引上げによる可処分所得の減少による影響がそれ。つまり、10月厚生年金保険料の上昇や配偶者特別控除圧縮の影響が大きかったと考えており、個人消費の落ち込みは一時的ではない。個人消費以外に、外需も2期連続でマイナス寄与となった。これについは円高の影響と世界経済の成長鈍化の影響が伴に作用したものと考えられる。足許で円ドルレートが輸出企業採算の106に接近していることを考慮すると、1-3月期には回復する可能性が高いと考えている。最後に、経済の強気見通しの主因たる設備投資の堅調さであるが、これは持続する可能性が高いと考えている。前述のM&A防衛のための資金使途の一つとして、積極的な設備投資というのは考えられる点であるからである。総論を纏めると、今後も落ち込む可能性のある個人消費をカバーできるかということであるが、これだけでは無理と考えている。失業率の低下及びその先の個人所得回復こそが重要であり、バブル的な株価上昇がなければ、回復基調に戻すのは時間がかかると考えている。

BBレシオについては、現在調査中であり、以下はまだ吟味されていない推論のレベルである。デジタル家電ブームで盛り上がったIT関連は、デジタル家電の需要が一循したため在庫調整に入っていた。在庫調整が順調に進んでいるとされていたが、12月ボーナス・クリスマス商戦でこれらの製品の売上げが想定以上に伸びず、危機感を募らせた製品メーカーが部品メーカーへのIT部品の発注を1月に削減させたということではなかろうか。多分に悲観的ではあるが、注意した方が良いとは考えている。


賢明なる個人投資家の方々へ
この記事はお役に立てたであろうか? 努力されている全ての人々に幸運が降りますように!

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為替動向について纏め

2月に入ってから従前の円高局面が転換し、一時1ドル=106円台への回復となった。この流れが一時的なものであるか、長期的なトレンド転換であるか、最近の材料を中心に纏めてみようと思う。『チャートから円高の傾向が弱まっており、円安に振れた』という意見もあるようだが、チャートは所詮後講釈に過ぎないと考えている小生は経済・政治情勢からアプローチする。

2月に入ってから最も変化があったと感じているのは、”米国の財政赤字”に対する市場見通しの変化ではなかろうか。この象徴的なものは7日に議会に提出された米国大統領予算教書であろう。ブッシュ大統領は、大統領選挙で2009年度(米国会計年度は前年10月から同年9月まで)において、2004年度財政赤字(予算時点)の半減にするとの公約を行っていた。予算教書の内容は、公約達成を満たしていた。イラクの米軍駐留費や年金制度改革費用を含んでいないという指摘もされているが、従前で大きなドル安(円高)材料であった”米国の財政赤字”が改善傾向に入った可能性があるということが非常に大きいと考えている。

次に中東の地政学リスクへの改善傾向がある。この点の象徴的なことは”イスラエル・パレスチナの停戦合意”であろう。勿論、何度もこのようなことは行われており、同じことが繰り返される可能性も否めないが、米国大統領2期目に入った直後のことであり、”ハネムーン”期間であるのかも知れないが、市場が期待する気持ちが平時よりも強いことも影響しているであろう。中東の地政学リスク改善は、イラクへの米軍駐留の期間や規模を大幅に縮小させる期待感を拡大させるという点において、従前の財政赤字の問題と絡み合っていることは言うまでもない。

三つ目は、新聞等で既報の通り、本邦個人投資家動向が外貨投資を拡大していることである。本年4月にペイオフ解禁イベントを前に”ペイオフ対策”として行われている面もあるが、恐らく”年金制度不振”の加速が要因として挙げられる。この点の象徴的なことは、議員年金制度改革の骨抜きである。政治家がこのことを意図して議員年金制度改革を骨抜きにしたとすれば大したものであるが、恐らくは偶然の産物であろう。日本の政治が市場へ悪影響を与えることはよくあるが、これは日本の政治的失政が市場へ好影響を与える類稀な例と呼べるのではないか。


以上が足許の円安を演出した材料である。以下は、今後どのような変化があるか否かを列挙することとしよう。

1.米国財政赤字が解決したとしても、米国経常赤字(貿易赤字)の問題が残る。円安で米国の対日貿易赤字は拡大するはずであり、次回(4月)のG7で新たな指摘がされる可能性があるのではなないか。

2.円安材料として、”日米金利差拡大”を指摘しなかった。この理由は、日米10年国債利回り差が縮小しているためであった。勿論、日米短期金利差が拡大していることは、短期的な円安材料であろうが、日米長期金利差縮小は長期的な円高材料であり、これらは相殺されると考えている。尚、金利差と為替の関係は連動性がある場合と不連動の場合があり、言い切ることは極めて困難だと認識しており、本論は一般的見地から記載した。

3.ドルを売りたい人々の存在が気になる。一つは、本邦輸出企業の存在で、1ドル=105円程度からドルの売上がりとなっている。2004年1月に行われた輸出採算レートの調査は105.90近辺であり、それ以上のドル高への抵抗感はあるのではないか。また、日本・中国を中心に世界の外貨準備は米ドルに集中している傾向にあり、リスク分散の観点から米ドルを他国の外貨に移したいと考えている国は多いのではないだろうか。


結論を言及することは敢えてしないが、冒頭の円安の流れが『一時的なものであるか、長期的なトレンド転換であるか』について小生の意見は汲み取っていただけることであろう。

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整合性欠く日銀の量的緩和?

[木村剛のコラム] 整合性欠く日銀の量的緩和についての異論を唱えることを今回のテーマとした。

『量的緩和の効果は甚だしく疑問である。日銀からの資金供給量は増えているものの、その資金は銀行の手元にそのまま残るだけなのだから、それで「金融緩和の効果があると信じろ」と主張する方に無理がある。』
『量的緩和は、あくまでも非常時の金融政策。信用創造メカニズムが機能不全であるときの異例の政策である。金融システムが正常化したときに、現状の量的緩和がそのままということは、整合性を欠く。』
『4月のペイオフ(略)全面解禁で、わが国は対外的に金融システムの正常化を打ち出すことになる。そのとき、量的緩和という見掛け倒しの金融政策をいつまで続けるのかという難問が日銀に突きつけられるだろう。』

上記は当該コラムの中から日銀が量的緩和を持続することへの疑問点を抜粋してみたもの。平たく言うならば、導入時とは異なり、信用不安がなくなり、金融システムが正常化したのだから、必要がなくなった量的緩和を辞めるべきだということを言いたいらしい。

この論拠には二つの脆弱性がある。
1.金融システムが正常化したと言い切れるか
2.量的緩和に金融システムのサポート以外の効果がないと言い切れるか

1.金融システムが正常化したと言い切れるかについて
ペイオフ全面解禁なのだから金融システムが正常化したと言い切っているが、実際には異なる。今回は普通預金等の流動性預金がペイオフ解禁となるが、代わりに全額保護される決済性預金が導入される。この点から考慮すると、1000万円以上の流動性預金が決済性預金に振り替わるだけで終わる可能性が高い。前回の部分解禁時では定期性預金が対象でこの時は定期性預金から普通預金への振り替わったことが記憶に新しく、多くの人々はこの対応をするつもりではないのだろうか。前回での慣れもあるのだろう、ペイオフ解禁2ヶ月前にしては大きな動きが確認できていない。決済性預金の金利がゼロになることを問題視する方もいるだろうが、普通預金の金利は限りなくゼロに近く、ゼロ金利政策及び量的緩和政策導入以降、預金による運用を放棄している個人投資家が突然、国債等の他の資金運用手段に転換するとは思えない。ペイオフが個人投資家に影響を与えない以上、金融システムが正常化したかどうかの判断はつかないだろう。これについては、金利がゼロでなくなり、個人投資家が運用努力を再開することを待たなければならない。以上を踏まえると、金融システムの正常化で量的緩和解除という判断を行うことはできないのではなかろうか。それが日銀OBで非常に優秀だと世間的には思われている人でもそうだろう。
余談ではあるが、ペイオフ解禁を前に外貨運用が増加している。これをペイオフ対策と我々は読んでいるが、実は年金制度不安からの防衛的措置がたまたま出ているのだというのは周知の通り。

2.量的緩和に金融システムのサポート以外の効果がないと言い切れるか
金融システム以外の効果の代表的なものとして長期金利の安定があげられる。巷で言われるように国債の発行額が2008年の借換え債増加を控え、徐々に増加している。この需給関係での緩和傾向が長期金利を跳ね上げる可能性がある。所謂、”悪い金利上昇”のことであり、これを回避することには絶大な効果があるだろう。小渕政権時代に行った公共投資によるクラウディングアウト効果がタイムラグを置いて現存することの弊害を避ける意味があり、景気の脆弱性も感じられ、社会保険料負担増大で個人消費が停滞する傾向にある現在においては、当然のことではないだろうか。

小生は、国債買切オペを停止して長期金利の弾力性を回復させるべきだとの意見を持っているが、あくまでも量的緩和解除が安易に行えない次善の策として考えているものである。詳しくは過去ログで確認されたし。

木村氏のコラムは突っ込み所が満載で他にも指摘したいことがあるが、色々記載するとぼけてしまうので本日はここで終了致します。確かにお金を払って(本を買って)まで読む内容ではないと考えている。

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12月の個人消費の落ち込みは政治の責任

先週も記載したが、個人消費が足元で落ち込んでいる理由は政治の責任と考えている。

厚生年金保険料で年間数万円、定率減税で10万円程度合わせると、一ヶ月当たり1~2万円の可処分所得の減少となる。これを知って消費を抑える人間は多いであろう。仮に賞与で今流行りのデジタル家電を購入することになった場合、少しでも安く購入するだろう。それが予想以上の当該商品の価格下落につながり、景況感を悪化させた。つまり、現状の景況感の悪化は政治の責任と言えるであろう。

2006年度のデフレ脱却シナリオに暗雲が広がる中、これから年々プライマリー・バランスを意識して家計を痛めつけていく。延々と抜本的な改革を怠り、非効率的な行政システムが維持されている中で、愚かなる国民は何時、このことに気づくのであろうか。

取り合えず、我が家では可処分所得の減少分を少しでも減少させるためにNHK受信料の不払いを決定した。NHKが馬鹿な所は、受信料を払わない人には頭を下げるが、払っている人に頭を下げていない点だ。客商売ではお金を払ってくれる客に頭を深く下げるものであり、この点だけでもNHKが世俗からかけ離れていることが良く判る。

本日の日経紙によると、個人投資家は2005年に日経平均が13000台の高値を付けることを期待しているとのこと。現実を見つめると厳しいと思われるが、夢を見たいという点においては、無能なる政府と同じなのかもしれない。

鎌倉時代と同じく、今期待するのは”神風”なのだろう。64ビットPCが神風となるかどうか、それが小生におけるテーマとなっている。

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