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早期、量的緩和解除?<記者に捧ぐシリーズ>

最近、日経新聞を読んでいると、今直ぐにでも量的緩和解除が行われるとかの如く、記載を良く見かける。春先に『記者に捧ぐ』シリーズを立ち上げたものの、放置されたままでしたので、日銀の量的緩和政策について記載しようと思う。

量的緩和政策とは

2001年3月19日に実施された日銀金融政策決定会合で、従来の無短コール・オーバーナイト物(或いは公定歩合)という金利を基準とした金融政策から、当座預金残高の一定水準の維持を目標とする金融政策へ変更された。

量的緩和については日銀が説明を行っているが、補足しておこう。

  • 金利がゼロ%に達した場合、日銀は金利による緩和ができなくなる。また、金利がゼロ%近辺に低下すると、「何れ金利が上昇に転ずる」という期待感で緩和政策が損なわれるという“流動性の罠”が発生する。これらに対抗する措置として、資金供給量を拡大に踏み切った。
  • 日銀は『当座預金残高増→ベースマネー増→マネーサプライ増→物価上昇』を期待して量的緩和政策を導入した。ベースマネー増までは実現したが、それがマネーサプライ増にはつながらなかった(一時的には増加したが長続きしなかった)。
  • 量的緩和政策の唯一の効果と言える“時間軸効果”の政策が導入された。『消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続する』というコミットメントを行うことで長期金利の低位安定を実現した。長期金利の低位安定は、水準の低下と共に金利変動を縮小させたため、債券運用利回りの低下を招き、低格付債のクレジット・スプレッドを縮小させるという副産物を産んだ(導入当初に日銀がこれを期待していたとは思えない)。クレジット・スプレッドの縮小は不良債権処理の大きな助けとなった。

量的緩和政策の限界

当初はマネーサプライの伸びが増加したが、ベースマネーの伸びがマネーサプライの伸びに波及しなくなった。このことでマネーサプライの伸びを直接高める方法(土地や株価を)を求める声もあったが、マネーサプライの伸びないのは、金融政策の流動性の罠が理由でないことが示されており、他の理由(中国に代表される新興国の台頭で先進国の人件費に減少圧力が強まった等のデフレ圧力)が影響していることが判明。色々な考え方があろうが、マネーサプライを直接高める方法でマネーサプライを増加させたとしても、それが物価に波及するとは限らず、物価に波及したとしても需要を背景としていないため、スタグフレーション(インフレ下の景気後退)に陥ると思われ、弊害を発生させることは間違いなかった。

日銀は弊害の発生させる新たなる政策を発動することなく、デフレ圧力を悪化させないようにベースマネーの増加を拡大させるという消極的な政策を持続しながら、経済の再生を待つという方向を行った。足許で雇用が回復傾向を示しており、民間雇用の回復という面においては有効な方法であったと小生は評価している。

但し、元々は日銀がデフレに陥る段階において後手に回ったことに原因がある。症状が出てから治療することは困難であり、予防医療が重要ということは金融政策においても重要との教訓を残した。この点を踏まえ、米国グリーンスパン議長は金融政策の運営を行っている。

量的緩和解除の条件

日銀は、『消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続する』というコミットメントについて、2003年10月10日に透明性を強化している。これによると、

  1. 直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。
  2. 消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、「展望レポート」における記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である。
  3. こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる

以上のように消費者物価指数が見通しを含めてプラスなることが必要とされている。

現状、量的緩和解除が盛り上がっている理由

8月26日に発表された7月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数で前年同月比▲0.2%であった。現状もデフレ傾向が続いている。にも拘らず、量的緩和解除が盛り上がっている理由は、10-12月に当該指標がプラスに転ずることが挙げられる。先日小生が記載したものの通り、このことは日銀審議委員(複数)も認識していることであり、それを日銀金融政策委員会側から指摘されていることがプレッシャーとなっている。

10-12月にプラスになる理由として、電力料金の変化が大きいと考えている。昨年10月に電気料金が引き下げられた。現在において、これが総合指数の前年同月比にマイナスの寄与しているが、本年10月にはこの要因が剥落し、マイナス寄与がなくなる分だけ総合指数が上昇する。加えて、今年10月には電力料金が引き上げられる。つまり、今までデフレ圧力であった電力料金がインフレ圧力に転換するということである。電力料金以外にも、昨年下落したものとしてコメ価格、固定電話料金、自動車保険料等が続々とマイナス寄与の剥落するため、消費者物価指数のプラス化は確実視されている。

以上を踏まえると、量的緩和解除条件の1及び2が満たされる可能性が高く、このことが量的緩和解除論へと結び付いていると考えている。

量的緩和解除が行われない(行われてはならない)理由

小生は現状、量的緩和解除を行うべき環境にはないと考えており、量的緩和解除が行われない或いは行われてはならないという立場を取る。その理由を以下の通り、何時も通り箇条書きを行う。

  • 現状の財政赤字の状況において、量的緩和解除を行うと長期金利上昇を招き(所謂、悪い長期金利上昇)、再び深刻なデフレ状態や景気後退の引き金になる可能性が高い。財政赤字削減を先行させる必要がある。
  • 年度後半に消費者物価指数がプラスに転ずるとしても来年度に再びマイナスになる可能性がある。8月分に消費者物価指数の基準改定で、携帯電話や液晶TV等が導入される。先日松下電器が発表したプラズマTVが前年の半分の価格に下落したことに代表されるようにこれらのマイナス寄与は大きい。一時的に消費者物価指数がプラスになったことで量的緩和解除を急ぎ、その後基準改定でマイナスに陥ったとすると、日銀の金融政策への信任が揺らぐ。従って、量的緩和解除は早くとも当該基準改定後に行うべきと考える。(2000年8月の悪夢の再来?)
  • 原油やガソリン等のエネルギー価格の上昇が消費者物価指数を押し上げている面があるが、米国でも見受けられるようにエネルギー価格上昇が他の消費を抑制する面がある。この点を充分に見極める必要があると考える。
  • 消費税の引き上げ前に行うべきという論がある。これは1980年代後半に低金利政策を持続させたことでバブル経済を生んことが原点にあろう。政治スケジュールに左右されることなく、客観的に判断して欲しいと考えている。消費税引き上げはデフレ圧力があるため、再び消費者物価指数を押し下げる効果がある。その点を考慮するならば、消費税導入後の量的緩和解除という選択肢も排除して欲しくない。

幸いにも、今回衆議院選挙が行われたことで、政権政党は消費税導入までの時間的な余裕を確保することができた。今回の次の衆議院選挙が2009年になった。選挙が行われなければ2007年であったことから、消費税導入スケジュールは2008年から2010年に延ばす選択もできる。一方、自民党が政権政党であった場合、来年9月で小泉首相が党総裁の任期を全う時点で総裁を降りることを表明しているため、これ以降に消費税導入が議論できるため、消費税導入を早めることができるということも考えられる。消費税導入が早期である場合には、量的緩和解除はそれ以降に実施すべきとなり、消費税導入が遅れる場合には経済情勢を充分に見極めた上で慎重に実施すべきというのが小生の考えである。

(おまけ)民主党がマニフェストに量的緩和解除を記載している件

民主党は「ゼロ金利と量的緩和という異常な政策をできる限り早く終結させ、正常な状態に戻す」と明記している。このための処方箋が充分に示されておらず、判断を行い難いが、早期の実現は困難であるように感ずる。目標を立てることは重要であるが、その実現が可能であるとの政策が明示して頂けなければ、票を投ずる訳には行かない。

小生は株価が上がって欲しいと考えている。現時点で判明しているマニフェストから判断して、より株価が上昇すると判断できるのは自民党の政策の方である。今まで自民党政権への批判として民主党政権を支持してきた人間(特に都市部の人間)は多いと思われ、小生もその一人である。今回は民主党への批判という点で、或いは自民党が自党内のネジレを解消する動きを見せたということを評価し、自民党へ票を投ずる予定である。念のため、株価が上昇しなければ量的緩和解除が困難であることは言うまでもあるまい。

テーマが量的緩和解除ということで何時ものように捻りを入れられず、ストレートに記載しました。記者の方々が読者に対してより良い記事を記載できる助けとなったとすると幸甚です。記者以外の方にはやや退屈な内容と思われましたので、最後に政治的な記載を致しました。

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日本株9月暴落説?

24日付日経金融新聞の最終面に、外国人の買が今年度は前年度よりも鈍いというような主旨が記載され、株に対する弱気の虫が疼き出したようだ。一方、24日付日刊ゲンダイでは9月暴落説が紹介されていた。先日の小生のコメントに影響された訳ではなかろうが、仮に小生のコメントを読んでいたとするならば、これらの記者は誤解していることになる。これについて簡単に記載しておく。

小生は外国人が売に転ずる時期を9月下旬から10月上旬としている。これはその頃に天井を付けるということを意味するのであって、現在が天井であるという意味ではない。勿論、他の条件次第ではあるものの、小生のシナリオ通りでは一段の相場上昇があってから下落するというものである。下落後については記載していなかったが、元来チャートの上値抵抗を抜けた場合、その水準が下値サポートとなることが常である。この基本に基づき、2004年3月の従前の高値を中心とするもみ合いになると考えている。この結果、昨年来から続いていた11,000〜12,000を中心としたもみ合いから、12,100程度を中心とするもみ合いへとレンジが一段上昇すると見ている。判りやすく言えば階段が一段上がったということになるだろう。

7月の金利上昇を当てた当たり屋(自画自賛)の意見を信じたい気持ちが判らないではないが、記事にする前にキチンと質問してからにした方が良いだろう(まあ、読んでないだろうから自意識過剰だなこれは)。

週央につき、何時も通り簡単に記載です。皆さん、儲かっていますか?小生はボチボチです。

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個人向け国債は良い金融商品か。

個人向け国債という商品がある。半年毎に10年国債の発行利回り(引受手数料を除くベース)−0.8%で決定する変動利付債の一種。変動利付債であるため、金利上昇期には有利な投資となるとされている。現在、個人向け国債が運用に目覚め始めた個人投資家に大人気となっている。業者サイドの人間である各種フィナンシャル・プランナーからも個人向け国債に対して肯定的な意見が多い。しかし、本当にそうだろうか。小生は以前、『資産のインフレ・ヘッジは必要か?』という記載を行った。その時に比べ、原油価格上昇が止まらない等とインフレ傾向が強まり、インフレ・ヘッジの必要性は以前よりは強まったと考えているが、少なくともインフレ・ヘッジでの個人向け国債投資には否定的である。前段として長くなったが、今回の記載は個人向け国債を貶すこととしようと思う。

個人向け国債のセールス・トーク

  • 一年以上経過すれば元金を下回ることがない。
  • 10年国債の市場利回りの上昇に伴い、投資利回りが上昇する

この二つが最大の特徴であろう。日本人は元金を下回るか否かで下回る物はリスクが高く悪、下回らない物はリスクがなく(少なくとは言わない所も特徴)良い。今は低金利であり、金利が変化するとすれば上昇するしかなく、投資利回りが上昇する可能性が高い。これらの点が受けているのであろう。

個人向け国債投資で見落としている点

  • 元本確保投資はリターンが小さい
  • 金利上昇でリターンが上昇するために支払うFee

小生が個人向け国債への投資が駄目だと感ずる理由は概ねこの二つに集約できる。ともにリターンの小ささを問題としている。順に記載しよう。

リスク商品でも元本を確保する方法は実はある。個人向け国債は期間が10年間を考慮すると、10年国債の元利合計で元本を確保して残りでリスク商品への投資を行うのである。具体的には
10年国債の利回りが1.5%とすると、10年間の元利合計は115%(税金は考慮しない)であるため、100÷115%=87%。つまり10年国債を87%投資し、リスク商品に13%投資すれば元本を確保することができる。

リスク商品には色々と選択肢があるが、配当利回り株の代表である電力株(配当利回り2.3%とする)を選択したとする。便宜上、電力株の価格変化がなかったとすると、トータルの利回り=1.6%。元の国債の利回りから0.1%上昇しているが、これが大きいと思うだろうか。現時点においてはこの方法は余り有効でないことになる。ちなみに、10年国債利回りが上昇すればリスク商品の比率を上昇させることができる。しかし、個人向け国債は、10年国債利回りが上昇すると、逆に金利低下を危惧することとなり、悩ましい面を内在させている。現在に限らず、将来に渡って

次に支払いFeeについてであるが、これは10年国債からのマイナス幅である0.8%を意味する。金利上昇で利回りが10年国債を上回るためには平均で0.8%の利回り上昇が必要となる。これは毎年0.16%ずつ利回りが上昇する必要がある。思惑通り、金利が上昇したとしても10年国債の利回りを下回る可能性がある。更に思惑が外れた場合に下回る利回り幅は相当に大きいものとなる。

金利が上昇するという確証がなければ個人向け国債に投資するべきではなく、金利が上昇するとの確証があるならば、株式や不動産等の他の資産への投資の方が良いと考える。従って、小生は個人向け国債への投資は中途半端で、満足なリーターンを得られることはないと感ずる。

個人投資家はきめ細かく投資先を吟味することができないため、個人向け国債による投資も仕方ないのかもしれません。運用に神経質にならず、仕事を一生懸命やって給料を増やすよう努力した方が効率的な資産形成なのかもしれません。

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何時まで続く外国人の本邦株買!

本邦株式市場参加者の最大の興味は、足許で相場をリードしている外国人の買が何時まで続くかということではないだろうか。これを予想するには前提条件が多く、予想は極めて難しく、納得感を得ることはないだろう。そう知りつつも敢えて本記載を行うこととした。

高値更新、トレンド確認。外国人買拡大

先日来からの年初来高値更新で、バブル後最安値(2003年5月)以降の戻り高値(従前は2004年3月)も更新。長期的なリバウンド相場の持続を示した。これに際して外国人投資家は本邦株式の購入を拡大している(財務省・対内証券投資より)。

小生の感覚的なものであるが、外国人は水準論よりも相場の方向感つまりトレンドに敏感なように思う。本邦投資家はこの逆で相場の方向感(つまりトレンド)よりも水準論に敏感である。これに当て嵌めれば、現在は本邦投資家の利食い売を外国人が購入している格好となる。日本人と外国人の何れが合理的であるかどうかは数ヶ月後の経過ではっきりするだろう。それよりも現状のトレンドの持続性は外国人の買の持続性にかかっていることは疑う余地はないということである。

外国人の本邦株投資戦略の背景

言い尽くされている感はあるが、記載しておこう。但し、一口に外国人といっても短期投資か長期投資か、アウトライトか裁定取引か、等多種多様な業態が参入しており、全体感としてどうなるかを把握できる人間はいないだろう。以下の記載は、データ推移に基づく推論に過ぎないことには注意されたし。

  1. 他国の株式市場に比べて本邦株式市場の上昇が劣後しており、割安感があった。この修正が発生すると考え、他国株式市場→本邦株式市場の資金移動動機がある。
  2. 世界的なデフレ傾向が持続した結果、株価下落と長期金利の低下が発生。株価下落においては収益率の低下も伴うため、株式投資の収益率向上につながっていないが、長期金利の低下により株式投資に対する要求収益率が低下した分だけ株価の上昇余地が生まれた。ここの所の配当利回り銘柄への投資増加を考えれば判り易いかもしれない。
  3. 中国の原油消費を元とした原油価格の急騰、および米国内の不動産投資熱の過熱(日本にも同様の事例が確認されている)により、これらの資産価格上昇で投資資金が増大していることに加え、株価と相乗的に上昇トレンドを描くシナリオがある。
  4. 足許で米国金利上昇や本邦投資家の外債投資熱過熱でドル高傾向が強まっている。これが輸出企業を中心に業績の上方修正期待を高めている。本邦輸出企業の為替採算レートは103円程度であり、現状の110台の持続した場合は業績向上から株価上昇が期待できる
  5. 4における裏シナリオとして、輸出企業の業績拡大が米国の対日貿易赤字を拡大させ、円高に進む可能性がある。この点を考慮して、米国人が円での本邦株投資(つまり為替ヘッジをしない)を拡大させている

以上のようなものであろう。

今後の外国人投資家の動向についての大胆予想

冒頭に記載したように外国人投資家の動向を大胆にも予想してみた。2004年3月頃も現在と同じような状況になっていた。この時の状況を振り返ると、株価が従前の高値を更新し、外国人投資家が投資を増大してからおよそ8週間後に外国人投資家は売に転じている。これに当て嵌め、9月下旬から10月上旬に外国人投資家が売に転ずると予想している。

この場合の鍵は円高ではないかと考えている。日本経済が外需の恩恵で踊り場を脱却した後、問題となるのは前述の通り、対米貿易黒字の拡大で、円高の危惧がある。現状、米国の金融引き締めを背景に対外投資が増大しているが、この金融引き締めによる米国経済の減速或いは失速の懸念は常に付きまとっており、6月頃の在庫減状況から3ヶ月程度は不安を感じなくとも良いだろうが、そのころに再度不安が台頭することでのドル高一服の可能性は充分にありうると考えている。

円高になり、株価が現状水準を維持している場合、外国人は本邦株を売却することを躊躇しないと考えている。その場合、他市場の動向から資金が向かう先が異なってくるが、色々なシュミレーションの結果、資金移動を行った方がパフォーマンス上昇の期待できることは間違いなさそうだ。

このような馬鹿げた予想をするのは、世界広しと言えども今の所、小生だけのようです。まあ、9月に入り、円高になったら騒ぎ出す人も出てきますので行動はその時からで充分間に合うと思います。但し、次の一手への備えとして、ご参考となったとするならば幸甚と存じます。

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日本経済、踊り場脱却?

ここの所、政府や日銀から日本経済が踊り場から脱却したとの発言が相次いでいる。少なくとも株価だけは、2003年4月のバブル後最安値以降の戻り高値を試す展開に至っており、その状況であると言えるかもしれない。しかし、そうは思えない面があり、その点を中心に記載することとしよう。

政府、大本営の発表を信じてよいのか?

政府は、必要以上に景気状況が良いことを主張する動機が存在する。8月8日に衆議院が解散され、9月11日の衆議院選挙に向け、小泉政権は景気回復の実績を誇示しようとしているのではないか。株価が上昇しているように、まるっきりの嘘ではないが、やや踊らされている感は否めない。政府な何度も景気が回復しているとの判断を示して来たが、暫く後に市場は失望に包まれてきた。この点に注意を払う必要があるのではないか。

日銀の踊り場脱却発言は信じてよいのか?

日銀が政府に対して協力するということは考えられるが、独立性があり、経済運営に対して責任のあることを考慮するとそれは考え難い。しかし、日銀にも景気が必要以上に良いことを主張する動機が存在する。それは量的緩和政策から脱却するということである。巷で言われているように、今年の10月〜12月に消費者物価指数(生鮮食品を除くコア・ベース)がプラスに転ずる。このタイミングを逃すと、消費税引き上げを控えているため、量的緩和政策から脱却することが難しくなる。景気が回復し、物価が上昇しているならば、量的緩和政策から脱却し、金利政策へ戻すという動機はないとは言えまい。

嘘から出た誠の持続性

今の所、政府と日銀の踊り場脱却の大合唱が幸いし、株価上昇につながり、ある意味”嘘から出た誠”の状況となっている。従前を前提にこの持続性を考えてみた。選挙までは政府及び日銀は景気回復方向の演出を協調して続けるであろう。しかし、選挙後はどうだろうか。政府特に財務省にとって、2008年の国債の大量借換問題の前に日銀に量的緩和解除をされることは非常に問題である。景気が回復し、財政問題が緩和される程税収が伸びるまで、長期金利の安定性を守りたいとの本音があるはずである。この点を踏まえると、選挙が終われば、政府は景気に対してトーンダウンし、日銀を牽制する可能性が高いとみている。

10月に入れば、政府が景気に対する発言をトーンダウンするということを頭に入れて置きたい。

最近の経済指標から踊り場脱却状況を確認

8月9日に発表された6月機械受注において、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」は前月比+11.1%(予想+6.1%)と予想を大幅に上回った。しかし、「船舶・電力を除く民需」は月次の振れが大きい為、6月の数値で判断することは危険である。四半期の数字の推移を見ると、前期比ベースで1-3月期が+0.8%、4-6月期が+0.8%、そして7-9月期見通しが+0.9%とほぼ横ばい傾向が続いており、見通しもほぼ横ばいと言えるだろう。

8月12日に発表された4-6月期GDPは、実質前期比年率+1.1%(予想+2.0%)と予想を下回った。しかし、中身で民間在庫品の寄与度が▲0.5%と大きく、在庫の減少が成長率を下振れさせた。5月頃は米国経済が不透明な状況に陥っており、この点から在庫圧縮に動いたと考えられ、今後の景気に対してはプラス面と言えるだろう。

一方、11日発表の米国7月小売売上高・前月比+1.8%(予想+2.2)、12日発表の8月ミシガン大学消費者信頼感指数92.7(予想96.0)と、ガソリン価格上昇が米国消費に悪影響を与えている様を示した。ガソリン価格上昇に引っ張られ、WTI原油先物価格は12日に67.10と市場最高値を更新している。

結論を導くのは難しいが、日米共に6月頃に在庫が減少していたことから、3ヶ月程度(つまり9月頃まで)は生産の拡大が持続するだろう。しかし、懸念材料が多いことを踏まえると、秋口に一旦、景況感が下向きになると考えている。無論、市場はこれらを先取りするだろう。利食い千人力との言葉を送りたい。

世間は夏休みですが、小生は休日出勤をする等、なかなか過酷な労働環境となっています。暫く余り更新できませんが、宜しくお願いします。

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日本市場におけるGスパンの謎の波及の分析

本年2月にGスパンが米国市場のイールドカーブのフラット化を謎と評した。これ以降、世界中の市場関係者がこの謎の解析をしようと試みた。この状況を日本に当て嵌めた者も多かったが、あれから半年が経過して世界的なイールドカーブのフラット化について考えて見る。

米国のイールドカーブのフラット化の要因

  1. 日本及び中国が自国通貨高(ドル安)を回避するための介入資金でドル債購入
  2. イギリス、オランダ等で年金運用へのALMマッチングが義務化され、米国でも同様な議論がなされ、超長期債需給がタイト化
  3. 米国の税収増に伴う財政赤字改善で期間リスク・プレミアムの縮小

小生が納得感をもったのは上記の三点であった。

本邦のイールドカーブがフラット化しなかった理由

4月以降、世界的なイールドカーブのフラット化を理由に本邦の長期金利が低下する或いは低下したと言われてきた。しかし、実際はカーブのフラット化が発生しなかった。この理由は

  1. 低金利であるが故に財務省が超長期債の発行に熱心
  2. プライマリーのバランスができないなど、財政赤字の悪化傾向が続き、期間リスク・プレミアムが増大
  3. 2003年度4-6月に金利低下に追随してカーブのフラット化を期待して長期債投資の拡大を行ったが、その反動で損失したトラウマが記憶に残っている
  4. 来年度に量的緩和解除が危惧されるため、長期債への投資を控える投資家が多い

他にも考えられるが、以上のものと考えている。

米国のカーブのフラット化が収まってきた理由

  1. 英国が50年債を発行したり、米国が30年債を発行再開する等、超長期債の需給が緩和
  2. 短期のインフレ懸念が長期に波及しないと見られていたが、雇用の改善傾向持続から給与面の上昇につながったため、米国のインフレ懸念に長期化傾向が見受けられる
  3. 中国人民元の切り上げは、大幅ではなかったが、持続的に少しずつ行われる。これにより、中国による米国債の買は減少し、対中国の輸入価格上昇の方向性。

他にも考えられるが、これらがポイントと考えている。

日本のイールドカーブはここの所の金利上昇で期間10年以上がフラット化している。これは従前のスティープ化の反動との意味合いが強いと考えている。一方向でスティープ化方向とは言うつもりはないが、世界的なイールド・カーブのフラット化という言葉自体が時代遅れになっていると考えている。この先が日本のデフレ払拭等の望ましい環境への胎動であることを願っている。

何時も通り、メモっぽくサラッと記載しました。個人投資家には無縁のお話でしょうが、住宅ローン等の期間設定にお役立て頂ければと思います。

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週末の米国経済指標より

本邦市場は郵政法案の賛否の行方を気掛かりだとの一色であるが、日本経済との冠を抱きつつも実は米国ネタが多い本サイトは週末の米国市場について記載しようと思う。

雇用堅調を示した米国7月雇用統計

ヘッドラインである7月非農業部門雇用者数は+20.7万人(予想+18万人)。同数字の6月が+16.6万人(速報+14.6万人)、5月が+12.6万人(改定前+10.4万人)と、過去分も上方修正されたことで雇用情勢の堅調さが示された。更に、平均需給が16.13ドルと前月比6セント・+4%(予想+2%)と労働コストの上昇も示した。このため、ここの所警戒感のあったインフレ懸念が刺激され、米国長期金利は4.3%台後半に上昇している。

米国経済は一時、ソフト・パッチ(軟調)と言われていたが、そのようなことは欠片も見受けられず、むしろ景気過熱が懸念される状況となっている。米国株式市場は、堅調な雇用統計で金利上昇を懸念する動きが強まり、逆に下落させる皮肉な結果に終わった。

しかし、今後も米国経済環境は堅調なのだろうかという点には疑問を持っている。金利の引き締めすぎによるオーバー・キルを危惧ではなく、足許の状況で一時的な可能性を否めないためである。春先に米国経済での最大の懸念材料であったGMやフォードの米国自動車業界は、5月頃危機的な状況に追い込まれていた。これが、従業員割引制度を顧客に適用するという販売戦略が当たり息を吹き返した。春先以降の米国経済の見方の推移は米国自動車業界の動向に左右されていたように思う。米国自動車業界の動向がこのまま米国経済の見方に影響を与え続ける訳ではないが、需要の先食い的な現状の販売戦略がそれ程長く続くとは思えない。秋口頃には転換があると見ている。

日本経済への影響

米国の長期金利の上昇は、確実に日本の長期金利の上昇を促す。今年度外れまくっている債券ストラテージストは再び長期金利の方向を上昇方向に変更するか否かを迷うことになるだろう。もう直ぐ、発表される4-6月GDPの後あたりで(夏休みで投資家不在という好条件もあり)、こっそりと変更するのだろうか。

米国は経済の過熱感からの金利上昇という状況が危惧されるが、日本はその懸念はない。日本の長期金利の上昇は米国よりもマイルドであるだろうし、日米金利差拡大から足許の円安局面は持続するという好材料もある。米国株式市場が下落したことで日本の株式市場が下落するならば格好の買場と考えて良いのではないか。

最近は夏休みの人も多いことでしょう。小生は休みなしです。休みがないなら金をくれ、そう言いたい気分です。最近コメントに切れがないと思いませんか?それは考えた通りに相場が動き過ぎて、市場の価格と自分の価格に差がなくなったため、上下のトレンドを言い難くなったことも一因であるでしょう。また、会社でデータを解析したいのですが、くだらない仕事の依頼をこなすので手一杯で、ネタの仕込が不充分ということもあるでしょう。ある意味、楽をしているという感じでしょうか。

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日本市場、振り出しに戻る

日経平均株価指数が1万2千円に達し、長期金利は1.4%目前に上昇した。今見ている風景はいつか見た記憶がある。それも最近だ。そうそう、実は3月の水準に戻したのだ。これこそが、投資家が2005年度の中心としてイメージされていたものであり、日本市場は年度所から5ヶ月余り経過してようやく振り出しに戻すことができたという訳だ。

日本経済の下振れと回復を演出したもの

日本経済が下振れし、然る後に回復するという状況を演出したものがあった。イメージの問題であるが、小生は"GM・フォード問題"にこの根幹を求めるのであった。3月上旬(丁度、日経平均が従前の年初来高値を付けた頃)、GMが大損を出し、格下げの危機に瀕したことに始まる。その後、自動車販売が低迷を続け、5月頃に米国経済はどん底となる。その後、米国自動車産業は、従業員向け割引価格の顧客適用という荒業で奇跡の復活を遂げる。6月に自動車販売台数は大幅に回復し、フロックだと思われた面があったが、7月にも持続した。そして米国経済はソフト・パッチを発生させることなく、5月に瞬間的な下振れがあっただけで堅調な回復軌道に戻したということである。

日本経済における市場の景況感の印象の変化も米国自動車会社の低迷→回復の流れとほぼ合致している。日本の経済指標の中でこれを顕著に示していたのが、日銀短観であった。米国市場の微妙な変化を企業担当者のセンチメントとして反映され、4月1日に発表された数字は軟弱なもので、7月1日に発表された数字は堅調なものとなっており、その後の日本市場の展開を見事なまでに合致させることとなった。

今後の米国自動車の状況と10月発表の日銀短観の予想

米国自動車の今後の状況を予測できれば、10月発表の日銀短観の予想ができるということになると言えまいか。極めて仮定的とならざるを得ないがこれについて論ずると、米国自動車の現状の販売形態は、需要の先食い的なものであり持続性が有るとは思えない。住宅バブル(Gスパンの言葉によるとフロス)が持続するのであれば、自動車の堅調な販売状況が持続するかもしれない。しかし、FRBが住宅バブルを破壊するために金利を引き締めているというのであれば、早晩住宅バブルは崩壊することになるだろう。それが10月までに到来すれば、当然、世の中はまた米国のソフト・パッチ懸念に動き、日本経済も春先の落ち込みからの回復が大幅に後ズレすることになるだろう。小生は、そこまで言い切ることはできないが、少なくとも6月・7月の反動が今後、速やかに現れると予想している。このため、次回の日銀短観は4月と同様に弱めのものになるということが現時点における予想である。勿論、シナリオの後ズレ、前ズレ、或いは消滅は世の常であり、状況によって変化すると思うが、今のトレンドが持続してオーバーシュート(株、金利の急騰)があるならば果敢に逆張りで受けることをお勧めしたい。

ビル・グロスは債券にやや弱気

ここの所、微妙にトーンダウンしていたPIMCOのビル・グロス氏であるが、最新のインタビューではFF金利4%まで上昇する可能性を指摘する等、債券に対する強気姿勢を後退させていた。来年には景気失速を指摘していたことには小生も同意したが、米国長期金利3%説は撤回してしまうのだろうか。その後の景気失速での可能性を主張するつもりかもしれないが、長期金利4%割れの位置で強気を示したことは相場観が外れたとの謗りを免れまい。

彼の弁護をするつもりはないが、中国元切り上げで多少状況が変わって行くという面があるだろう。詳細の記述は避けるが、従前のグローバル・フラットニングや中国発過剰流動性相場は完全な転機を迎えており、市場は新たなシナリオを模索している所と見ている。新たなシナリオについてはまたここの場所で記載できるとすれば幸運であろう。

最近は平日も休日も共に軽めで内容の薄めのものが多くなっています。そうです、単に時間がなくて疲れているからです。まあ、個人投資家の皆様はみんな儲かっているので特にこの記載を必要とすることはなく、問題ないと思います(それにどう考えても金融業の社員の方々しか見ていなさそうですし)。

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