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株価を押し上げて来た物、気になる剥落

この所の日経平均株価指数は1万6千円辺りでうろうろする冴えない相場となっている。そこら辺の要因を探るべく、本論を進めるつもり。従って、株価が上がって欲しいと考えている人、及び株価が下落(振興市場かな)して不安で夜も眠れない人は先を読まない方が良いかも知れません。まあ、所詮はいい加減な推論なので、それをご承知で読んで欲しい。

□ ファンダメンタルズは順調持続

2月17日発表の10-12月期GDP実質前期比年率は5.5%と予想(4.9%)を上回った。にも拘らず、何故株価上がらないのだと怒っている個人投資家は多いかもしれない。これについて、若干解説しておこう。GDPという指標は経済指標の頂点に君臨する重要な指標であることは確かである。しかし、致命的な欠陥がある。それは発表が四半期終了後から1ヵ月半程度あとに発表されることである。この遅効性から仮に好調な経済情勢を示したとしてもそれは既に市場に織り込まれていることが多い。特に先行性があると言われる株式市場であれば言うまでもないだろう。

10-12月までについては、個別企業の四半期開示及びそれに伴う増配期待で、株価は既に上昇していた。GDPの発表はそれが誤りでなかったことを確認したに過ぎない。この状況においてはファンダメンタルズで重視すべきは、1月以降の状況である。その点から言えば2月23日発表の1月貿易収支の方が重要と言える。当該指標は、5年ぶりに貿易収支が赤字を示したことで、純輸出面からGDPの伸びが抑制されるという面がある。その辺を先回りして株売に動いている面もあるかもしれないが、小生は余り悲観していない。当該指標における輸出数量指数の伸びが持続しているためだ。翌週の28日には1月鉱工業生産指数が発表となり、生産の回復が持続していることを示す数字となることであろう。

ファンダメンタルズの堅調さは持続されていると思われるが、一旦不安に支配された市場心理が鉱工業生産指数だけで回復することは厳しいかもしれない。場合によっては4月の日銀短観までまたなければならないかもしれない。

ファンダメンタルズは株価を最近押し上げてきた物としてはそれ程大きいものではなく、これが剥落していないとしても株価への影響は小さいだろう。

□ M&A期待の剥落

昨年来の株価を良くも悪くもリードしてきた銘柄がライブドアであることは間違いないだろう。ライブドアの株価期待はM&Aの効果を反映していたもの(最近、同社株が上場廃止の方向になってからは除く)と考えている。その点から、今はM&A効果に対して疑問が持たれていると言える状況であろう。

専門家の一般論としては、ライブドアの件がM&Aの効果を否定するものではなく、再びM&Aの効果が着目される方向になるとの意見が多いのは知っている。しかし、今回の件で規制強化(規制緩和の遅延)になりそうだという点において、株式市場にとってネガティブな材料であることもまた事実である。

このことを考慮すると、やはりM&A期待の回復には相当の時間を要するように思われる。米国においても、エンロンやワールドコム等の会計不振による相場低迷から脱するまで時間がかかった。日本において時間がかかることは間違いなかろう。

市場の不安心理は、M&A期待の剥落に止まらないのではないか。具体的に言えば、第二のライブドアの出現を怖れているということである。この点を考慮すると、今まで株価をファンダメンタルズ対比で大きく押し上げてきたM&A期待は期待できず、むしろ今後の株価はファンダメンタルズ対比で下振れする局面も増えて来ると考えるべきではなかろうか。

M&A期待の剥落は、株価への影響は極めて大きいと考えている。

□ 量的緩和解除への不安

概ねこのような記載パターンとして、3つの理由を挙げ、説得力のあるものを後ろに置いていくというものである。そう、小生は最近の株価の低迷の主因を量的緩和解除への不安感の台頭と考えているのだ。

量的緩和政策が、政府・日銀のドル買介入と合わせて過剰流動性を生み出し、米国株高を経て本邦株価を押し上げた面がある。量的緩和解除を行うとこの流動性が引き締められることになり、株価上昇のロジックを失うこととなる。加えて、量的緩和解除を行うことで本邦金利が上昇することとなり、今まで預金から株式市場に流れていた資金の流れに影響を与える。ついこの間の5年国債利回りは0.5%程度であったが、現在1.1%と2倍超になっている。直近の収益率において、株価の優位性は動かないが、動かない或いは収益率がマイナスになる株式市場を目の前にすれば確定利回りを求める投資家は少なくなくって行くかもしれない。

3月末までは増配期待があり、配当の権利落ちとならないため、この心配は軽微であろう。しかし、量的緩和解除が4月に行われるとして、権利落ちを迎え、金利が上昇しているとするならばその不安は大きくなる。株価が新年度に下落する可能性はあると考えている。

但し、救いはある。量的緩和解除で金利が上昇しなければ良く、それは日銀が金利が一気に上昇していく印象を払拭すれば良いことである。小生は、福井日銀総裁について、市場特に株式市場が過熱も失速も防ぐように注意を払いながら、行動・発言しており、その点においてGスパン議長に類する能力があると期待している。債券市場関係者が見込むように、量的緩和解除後にゼロ金利解除を急ぐようなことをしないだろう。小生の感覚的なものではあるが、ゼロ金利解除を行えるとすれば、日経平均は2万円程度に上昇した時とイメージしている。

最近は雑務に追われて、余りマーケットを見れてません。意外とそういう時の方が冷静に見ることができたりもします。頭が整理されていない状況で売買しても上手くは行きません。休むも相場の通り、4月まで相場参加を待っても良いのではないでしょうか。ファンダメンタルズ面やその他の要因で明るさを感じられてから、相場に参加しても遅くないと思いますので。

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新FRB議長に就任したバーナンキ氏の今後についての雑感

2月1日にベン・バーナンキ氏がFRB議長に就任した。前任は18年間勤めた名指揮者と呼ばれたグリーンスパン氏であり、当面は比較されることとなり、ベン・バーナンキ氏のプレッシャーは相当のものであると容易に想像できる。そのためか、『ベン・バーナンキ世界経済の新皇帝(田中秀臣氏著)』(本書については当サイト右欄の小生の書評を参照され度)に代表されるように、好意的なものが多い。2月14日・15日にはバーナンキFRB議長として、最初の大仕事と言える米国議会での議会証言が控えている。これを機にハネムーン期間は終了し、バーナンキFRB議長に対するシビアな評価が始まる。そろそろ、止まっていた時計が動き出すようなイメージがある。その動きが良いものであるか悪いものであるかは、バーナンキFRB議長次第ということとなろう。以下は現時点でバーナンキ氏のイメージを纏めておこうということで記載するものである。

□ バーナンキFRB議長を待ち受ける困難な局面

以前に米国経済について"斜陽の米国経済"という簡単なメモを記載している。これを記載した時と比べ、米国経済は1月雇用統計に代表されるように好調な数字を示しており、一見すると問題がなさそうに思われる。しかし、以下の三つの理由で小生の警戒心はむしろ強まってきている。

一つ目の理由は、雇用環境改善に伴う本格的なインフレ懸念の台頭にある。原油価格が上昇する等、原材料費が上昇する中で雇用環境が改善をするとインフレ懸念を押し上げる。1970年代には原材料費と人件費の上昇でインフレが発生し、コスト・プッシュ・インフレと呼ばれた。途上国の工場化で、そこまで本格的なインフレは発生しないだろう。しかし、少なからず物価水準を押し上げることが問題となる。グリーンスパン前FRB議長は、議長席の禅譲をスムーズに行うために+0.25%毎に計14回の利上げを行ってきた。その行為は予防的な引き締めであり、足許までは景気の持続と物価の安定に寄与してきたことは間違いない。但し、今後の経済情勢を考えれば、住宅価格や株価の沈静が遅れた(所謂、バブル状態の放置し過ぎた)可能性があるとすれば問題となる。資産価格の上昇は個人消費の過熱を産み、それが雇用改善を産み、それが新たな個人消費需要と資産価格の上昇をもたらすというサイクルがインフレを招くことになる。現在のインフレ指標は、12月PCEコア価格指数において前年同月比+1.9%とFRBの予想レンジ+2.0%の上限近辺にあり、これに雇用の改善が加わると、インフレ率が押し上げられ、予想の上限を超える可能性が高まる。この状況においては、利上げを打ち止めすることは困難と考えられる。

2つ目の理由は設備稼働率が高水準であることである。設備稼働率が高水準であることは、先行きの設備投資拡大を促すということで経済にとって好環境との認識が強いかもしれない。しかし、来るべき景気後退局面に備え、設備投資を抑えている面が強いのではないかと考えている。このことは、商品供給力を過小にさせることでインフレ懸念を強める面と、昨年のハリケーン被害からの復興需要での波及効果を阻害する面との両面から問題視されると考えている。

3つ目の理由は、ISM製造業指数や各連銀の景気指数の下落傾向であるということである。危惧することがインフレ懸念のみであれば、物価上昇率に合わせて単に金利を引き上げれば良いという単純な議論となる。しかし、景気が後退局面に差し掛かっていると問題は複雑になるか。物価か景気か、その何れに配慮すべきかが問題と、ハムレットの心境と思しき状況になる。今の所、ISM製造業指数で景気の境目の50を越えているため問題はないとおもわれるが、60近辺で景気後退を危惧しなくても良い状況から50台前半となり、多少配慮しなくてはならない状況は明らかに異なる。仮の話であるが、雇用環境が堅調な状況のまま、ISM製造業指数が50を割れそうになった場合には金融政策のハンドリングは極めて難しいものとなるだろう。

□ インフレ・ターゲティング(金融政策の物価指標の目標化)を採用できないのは

バーナンキFRB議長はインフレ・ターゲティング論を一旦沈静化させた。日経新聞や冒頭紹介した本(クドイようですが決して推薦していません。むしろ逆です)の著者等はFRBがインフレ目標制度を導入し、日銀もそうすべきだとの論調であるが、現状それを行うことは危うさを孕んでいると考えている。

前項にも記載した通り、バーナンキFRB議長が直面する困難な状況において最悪のシナリオは、スタグフレーション状態(或いはその懸念が高まること)である。米国の政治環境が良好であれば金融政策への負担が軽減されるが、金融政策への負担がむしろ強まることが予想される。ブッシュ大統領の支持率が低下していることもあるが、問題は財政赤字にある。イラク・アフガンという金食い問題が放置されており、年金・保険制度への改革にも失敗し、財政赤字削減計画は絵に描いた餅の状態になりそうである。加えて本年は米国中間選挙があるため、財政赤字削減という票に結び付き難い問題については、不熱心であろうことも問題。このような状況でスタグフレーション状況に陥った場合にバーナンキFRB議長は痛烈な批判に晒されるが、その状況でインフレ目標を採用していた場合には更に批判されるための材料提供を行うことになる。

スタグフレーション状況においては、金融は引き締め、財政は拡大ということが基本的なポリシーミックスとなる。しかし、米国は財政赤字の問題から財政拡大に制約があるため、金融政策への負担が高まることは間違いない。この状況は、バーナンキFRB議長が外野として批判した当時の日銀がおかれた政治的な環境に似通っている。バーナンキFRB議長が日銀を批判した時に提案したような大胆な政策が導入できるか興味があるため、不謹慎ながら米国がスタグフレーションに近い状況にならないかと思っている。その場合にバーナンキ議長へのカウンターを返したいと考えている日本人は少なくないかもしれない。

話を戻そう。スタグフレーション時にインフレ目標を導入している場合に何が問題となるかとうことについて記載する。インフレ目標は透明性が高い政策でそのこと事態が一般的には悪いことではない。しかし、状況が平時でない場合にそれを導入した場合に足枷になりうることが問題と考えている。スタグフレーション状況においては前述の通り、景気と物価の両面に配慮しながらナーバスなコントロールを行わなければならない。その場合の最適な物価目標を定めることは極めて困難である。景気だけ或いは物価だけに目標を定めて政策を組み立てることは可能であるが、その場合には当然のことながら前段で記載したFRBへの批判の格好の的になること受け合いであろう。また、仮にその最適な目標が組み立てられたとしても、平時でない金融政策においては市場の期待にどのように働きかけるかが問題となる。GDPと物価指数が同じ数字であっても株価指数の水準によって現状の物価を上げるべきか下げるべきかを考慮しなければならず、更に株価指数の水準が同じであっても直前から株価指数が下がってきたか上がって来たか或いは、その両方が組み合わさっているか等、機械的に決められるようなものではなく、場合によっては物価目標を細かく動かす必要性に迫られるであろう。物価目標を細かく動かすことは政策の信頼性を損なうことであり、またインフレ目標導入の主目的からも外れる。この点から考慮してインフレ目標を封印したのではなかろうか、と小生は考えているのである。

□ 田中秀臣氏の本を読んで思うこと

余談であるが、かつて今は無き某サイトの金融政策に関する掲示板でインフレ・ターゲティング論の議論をおこなったことがある。その際に、田中秀臣氏の本にも記載されていた『インフレ・ターゲティングは何が何でもインフレにするという政策ではない』ということを意見として評せられた。勿論、その当時から小生はそのことを理解していた。その書きっぷりには『インフレ・ターゲティングに反対する人間は馬鹿だから反対するのだ』的な不遜の態度を垣間見た為、まともに議論することが馬鹿馬鹿しくなったことを思い出した。

前項にも記載したが、インフレ目標の導入で中央銀行の政策の足枷となる可能性を純粋に問題としている。更なる問題として、例えば中央銀行がインフレのみを押さえ込む政策の抗弁に利用される可能性が高いこと挙げたい。それでも透明性が高い方が良いとするかどうかは意見が割れる所ではあるだろう。しかし、中央銀行に対して求めるものは透明性ではなく、適切な政策が優先されるということを考慮すると、透明性を確保する為に政策の足枷となることは避けるべき、という論はそれなりに尊重されて然るべきであろう。

インフレ目標導入に傾斜している人中に、ゼロ金利政策時に量的緩和政策を導入にマネーサプライを増大させればデフレが解消されるという旨の意見表明を唱えていた人が多いことが気になっている。日銀はベースマネーを拡大し、多少マネーサプライが伸びたが、デフレは解消には至らなかった。その場合に、マネーサプライが伸びるように日銀は何(株や土地等)でも買うべきとの極論が出ていた。これらを評して小生は”金融政策に魔法の杖はない”とした。インフレ目標は”魔法の杖”ではないと考えており、苦労して導入しても期待外れということになるように思われる。期待外れであること事態は問題ではないが、その場合に極論を言う輩が出てくるであろう。言論の自由はありますが、極論で金融政策を語って欲しくは無いですから。

当時のインフレ目標導入に積極的であった人々は、インフレ目標導入を封印したバーナンキを批判することでその導入を図るように働きかけては如何だろうか。その効果により見事、スタグフレーション回避してみるべきではないか。これ程判り易いことはないと思う。しかし、バーナンキ議長は簡単に導入には動かないだろうと考えている。金融政策の理論と実際は異なることを彼は知っているからだ。当然、金融政策実行者の内野と外野で意見も多少変わってくるはずである。議会証言で、何か面白いことを言って欲しいと期待している。

□ 結論バーナンキ・ハネムーン後

バーナンキ議長に対するハネムーン期間の終了が明確になれば、それは米国経済が悪化していることを示している。インフレが過熱しているか、景気が減速しているか、或いはその両方かということである。現時点においては景気が減速しているということをイメージしている。景気減速によりインフレの過熱は抑えられるというのが基本のシナリオとしているということである。小生は、バーナンキ議長に思い切った金利引き上げ停止を決断することを期待している。金利引き上げの持続を行った場合には、中央銀行の宿命である物価指標重視の凡人という評価を行うかも知れない。答えは4月頃に出ているかもしれない。

約2ヶ月位のご無沙汰となってしまいました。久しぶりにトラックバックを貰いましたので、それが記載のきっかけです。昨年はファンダメンタルズ無視の市場が持続したため、全くの出番なしという感じではありましたが、本年はホリエモンの脱退の影響で多少はファンダメンタルズも復活すると思われます。勿論、量的緩和解除が近々に行われる為、その点も大きいと思います。しかし、記載していない間もアクセス件数が多かったことには多少驚いていています(記載しない方がアクセス件数が増加するのです)。まあ、想像通り、卒論等でのネタに使う為にアクセスが増えていたのかもしれません。思いついたらまた、記載してみようと思います。尚、田中氏の本は中身を見ないで買ってしまったことが敗因でした。今度からは見出しに騙されないようにしようと思います。

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