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長期金利が急上昇している訳

年度末年度初を挟み、各市場は大きく変動していたが、そのための多忙を理由に当該記載を行っていなかった。久しぶりに記載すべく選んだテーマは、”長期金利の急上昇”についてである。『日本経済』というタイトルらしいテーマではないか。

□ 完全失業率と長期金利の関係

図 完全失業率と長期金利の関係

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図はフィリップス曲線の考え方を応用し、完全失業率と長期金利(10年国債利回り)の関係を示したものである。この関係は概ね3つに区分される。

  1. 失業率が低い完全失業率状態(失業率は低位安定で長期金利のみが上下)
  2. 失業率が低下(上昇)に伴い、長期金利が上昇(低下)する反比例の関係
  3. 流動性の罠の状態(長期金利がゼロに接近したことで、失業率上昇の影響なし)

日銀が先日まで行っていた量的緩和政策は、上記3の状態つまり、長期金利が低下することで経済を刺激するメカニズムが働かない流動性の罠に陥っていたため行われていたものである。足許で量的緩和政策が解除され、ゼロ金利解除が想定されているのは、3の状態から2の状態へと変遷しつつあることを示しているのではないか。

2月時点の完全失業率は4.1%と1月の4.5%から大きく低下した。失業率の低下は雇用環境の改善であり、雇用環境の改善は雇用所得の上昇を促す。雇用所得の改善は、個人消費拡大を通じて、景気を拡大に導くとともに、商品需給の改善からデフレ脱却を促す。失業率の改善が持続するならば、デフレ脱却を背景とする長期金利上昇が持続する状態となるであろう。

今後の目線として、完全失業率が4%を割り込むか否かを注目している。当該水準が定着するならば、恐らく金融政策における政策金利はゼロから脱しているだろう。その際、長期金利は2%の水準を突破することになるだろう。現在、長期金利は1.9%まで上昇しており、その背景は完全失業率の低下である程度、説明可能と考えている。

□ 今後の雇用環境について

現在、雇用環境が改善している主な理由は、団塊世代の引退と考えている。団塊世代の引退は2007~2010年頃に控えており、各企業が業務継承のため、積極的に新卒者を中心に雇用を拡大している。また、この要因は、足許のみらず、数年間持続することになる。4月3日発表の3月日銀短観において、雇用人員判断DI(全産業・全規模)が-7(マイナスの場合は「不足」)で前回-4から拡大し、6月の見通しが-8であることから、足許においても雇用環境の改善は持続する見通しとなっている。

一方、3月日銀短観において、生産・営業用設備判断DI(製造業・大企業)が-1(マイナスの場合は「不足」)で前回+2から拡大し、6月の見通しが-3であることから、設備が不足が持続することを示している。景気拡大が持続し、需要が拡大することに対処するために各企業は設備投資を拡大する見通しである。しかし、設備投資には生産性が拡大するにはタイム・ラグが発生するため、企業は雇用人員を確保(或いは残業拡大)で対応することになるであろう。

これらのことから、当面、雇用環境の改善は持続し、人件費の拡大つまり雇用所得の拡大が持続すると考えている。長期金利は失業率のみに影響される訳ではなく、この点のみで考えることは危険である。しかし、全く影響してこなかった失業率が長期金利に影響するようになったことに注意すべき状況になったことを重視したい。

久しぶりの記載は如何でしたでしょうか。長期金利の上昇は株式市場への影響も大きくその背景を知ることは有益と思います。この点を推理してみると良いと思われます。平易に記載したつもりですが、内容を理解して頂けれたならば幸甚と存じます。

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