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世界同時株安について

先週、世界同時株安が発生した。週末にかけて反発に転じたことで、胸を撫で下ろした貴兄も多いことであろう。しかし、本当にそうであろうか、株安の要因を粒さに分析し、その上で結論を導き出す必要があると思う。今記事はその一助になればと考え、記載したものである。

□ 風が吹けば桶屋が儲かるの如き株安

今回の株安は、経済のファンダメンタルズに変化があったため発生したものではなく、他の市場の反応が連鎖的に作用した発生したものである。経済のファンダメンタルズに変化がなかったことが今回の株安を過小評価している理由ではあるが、連鎖的に作用するという事態にある種の恐怖感を小生は覚えている。

今回の株安のメカニズムを明確にはできないとは思うが、小生が考える連鎖的な株安の様子を以下に列挙する。

  1. 米国金融政策への不信感が芽生え
  2. 投機的に資金投入していた商品市況への不安感の台頭
  3. 季節的に5月は6月決算ファンドの解約の通知期限に当たり、利食い売が元々、出易い
  4. 商品市況の下落がアジアの株式市場の下落に連鎖
  5. インドにおいて、国内投資家に対するキャピタルゲイン課税を強化するとの提案を外国人投資家にたいする物との噂が巡る
  6. インド株が急落。それが各新興国株に連鎖
  7. 新興国株安が先進国の株安に連鎖
  8. 世界的に株安が進み、債券が買われ、米ドルへのレパトリ(自国通貨への回帰)が発生

□ 海外ファンドのリスク取得状況

前述のように、本来分断されている市場が連鎖的に反応する要因として、海外ファンドの存在が指摘されている。上記の通り、季節的に海外ファンドによる利食い売が入り易いこともあるが、海外ファンドのリスク取得状況に問題があるように考えた。海外ファンドのリスク取得状況の問題点を以下に列挙する。

  • リスク管理にはVaR管理が利用される。VaR管理においては、日中の値動きやポジション変化(所謂、日計取引)の管理が脱落している
  • 商品や市場を分散し投資していることで、リスクを縮小化している。しかし、分散投資と言いつつも、共有化された情報を元に投資している面があり、分散効果が損なわれている
  • 過去の経験則に基づき、ポジション量を決定している所が多い。しかし、新興国の市場は過去の経験則では語れないような予想できない価格変動を巻き起こすことがある。その予想できない価格変動に対する猶予幅を想定せずに投資していることが多い
  • LTCMの時に問題となったレバレッジは、銀行の融資管理が厳密になっているため、少なくなっている。しかし、利益を挙げるためにはリスクを取る必要があり、ここ近年はファンドの投資環境としては良好な状況が続いている。リスク管理の隙間を付いてリスクを取ることが多い

海外ファンドが本来許容されるリスク許容度を遥かに越えるリスクを取得していた可能性が高いのではないか。リスクが過剰である場合の動きとしては、リスク縮小の動きつまり、ポジション整理に動くことになる。ポジション整理の動きとは、つまり、買っていたものを売、売っていたものを買戻すことである。商品と株式が売られたのは従前で買っていたものであり、債券と米ドルが買われたのは従前で売っていたものだからという整理で良いのではないか。

□ ファンダメンタルズは万全か

日経紙に代表されるように今回の株安はファンダメンタルズが堅調であるから問題がないとされている。しかし、本当にそうであろうか。小生が考える不安な点を以下に列挙する。

  • 今月発表の機械受注は予想を下回った。設備投資の先行指標である電力・船舶を除く民需がダウン・トレンドとなっており、先行きの設備投資減速を示唆していないか
  • 足許で多少緩和されたが、4月下旬以降に円高ドル安が進行している。米国が一段のドル安を望んでいるとの指摘も見られ、業績への悪影響が考えられる。
  • 鉱工業生産において、電子部品デバイス工業の在庫が増加している。そう言えばオリンピックの後にそのような状況となったが、ワールドカップの後に同様のことは発生しないか
  • 現在消費者物価指数が上昇傾向を示しているが、この要因は最終需要の増加ではなく、素材価格の上昇を吸収できなくなったことに要因がある。ある意味で消費税が引き上げられたと同様の状況と言え、需要を後退させる可能性がある
  • 日銀が早晩、金利を引き上げる。市場金利が上昇することとなり、株式の要求利益は高まるが、その要求を満たすほど利益が稼げない可能性があり、相対的に株式投資の魅力が低下

日経平均株価指数が大きく下落した所では、PERが20倍を割り込んだ。それが割安かどうかは個人の判断ではあろうが、当面は押し目を待って慎重に投資するとのスタンスが重要ではないか。個人投資家の信用残が落ちていないことで、急落のエネルギーが蓄積されている可能性があり、本来買うべきパニック的な売局面で自身がポジション整理の売に動くことのないように注意されることを薦め、本記事の結論とする。

最近、日経紙を読んでいて下落相場の中での楽観論に終始していたため、やや危機感を感じて今回の記載を行ってみました。ブラックマンデーの頃と似ているのでは、という指摘をする方もいらっしゃいますので、楽観論一辺倒ではないと思いますが、小生の悲観的な指摘を踏まえて投資して頂くことで多少なりとも慎重になることが必要とされる局面に転じたように思います。皆さんの期待する金融政策についてで申し訳ありません。結論は纏まっているのですが、本業で利用してからこちらに記載することと致しますので暫くお待ち下さい。

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日銀ゼロ金利政策解除の時期は

本日のタイトルは、最近最もよく質問される内容である。巷ではその時期が6月であるとの報道も見られるが、小生は日銀がそれ程拙速には考えていないと思う。その辺を中心に以下の記載を行おうと思う。(何時もは結論を最初に記載しているが、今回はパターンを変えてみた)

□ 6月ゼロ金利政策解除論の論拠

6月解除論を考えている人の頭の中身を全て理解している訳ではないが、記事やコメントから概ね以下の理由と感じた。

  • 量的緩和政策時に積み上げられた日銀当座預金残高が6月早々にゼロ金利政策を維持する必要水準に減額できる。このため、何時でも金利を引き上げる環境が整う。
  • 日銀は、量的緩和政策解除を市場が予想していた4月28日以降ではなく、前倒しの3月9日に強行した。ゼロ金利政策解除においても同様に市場の予想よりも早期に行う可能性が高い。
  • 前項と重なるが、金融政策においては早期変更を重視する傾向にある。現在はインフレ抑制方向ですので、『予防的引き締め』という言葉で語られることが多い。
  • 9月に自民党総裁選が行われ、小泉総理が退陣する。その前にデフレ脱却宣言行うため、今回のゼロ金利政策解除を明確に否定しないとの読みがある。(10月以降は反対される可能性がある)
  • 日銀が月次で提出している日銀月報の景気判断を5月に『拡大』へと上方修正するとの見方が出ている。

こんな所だと思う。それ以外に、市場金利の状況から、3ヶ月の先物金利の水準より、6月頃にゼロ金利政策が解除されることが前提となる金利水準に達しているということも大きそうだ。

□ 6月利上げ(現時点ではゼロ金利政策解除と同じ意味)がない理由

前述の理由と同じような形で、6月利上げがないと考える理由を以下の通り列挙する。

  • ゼロ金利政策解除ができるようになったから、ゼロ金利解除を行うという理由は適当ではない。
  • 量的緩和解除を前倒しした理由は、次の引き締め政策であるゼロ金利政策解除までに時間がかかるということ以外には考え難い。ゼロ金利政策解除後に追加の利上げを阻害する要因はないため、急ぐ理由にはならない。
  • 予防的な引き締めの効果は否めないが、量的緩和解除時の物価上昇率と足元の物価上昇率を比較して、インフレ懸念が高まったとはいい難い。現状の消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年同月比+0.5%と全く変わっていない上で、未だにデフレ回帰の危険性が否定できない水準にある。
  • 9月の総裁選に絡む政治要因が影響するとすれば、日銀の独立性の有り方に問題があるということになる。これは考慮されるべきものではない。
  • 日銀が景気判断を引き上げるということは考慮されるが、最近の株価動向はどうであろうか。量的緩和解除時の水準とほとんど変わっておらず、経済への過熱感は全く感じられない。2000年8月に日銀がゼロ金利政策を解除した頃の日経平均株価指数は1万6100円程度であり、現状と余り変わらない。ゼロ金利政策解除を強行し、再び失敗した場合、日銀への批判は相当なものとなろう。
  • 市場の金利において、行き過ぎは常。2003年5月頃は追加の量的緩和政策が行われるとの見方で長期金利が0.4%まで買い進まれたことを例にして判るように、市場が間違うという可能性は結構高い。

最大の理由は、この6月に利上げを行うと、円高ドル安が加速することにある。それが日本経済のためでないことは明白である。そのようなことを行うほど福井総裁の頭が悪いとは考え難い。但し、先行きにゼロ金利政策が解除されることは間違いなく、また急激にインフレ懸念が高まる可能性が全くのゼロ%ではないため、日銀が否定することはないだろう。結果は6月になれば判るということであろう。

□ 結論

利上げ時期は2006年9月と考えている。

理由はあるがこの場で開示することはない。それぞれで受け止めて頂ければよい。所詮は予想で、状況が変われば変更されるべきものであるため。

今回は2日連続での記載となりました。ゼロ金利政策解除について市場参加者の興味は大きいようですが、然るべき環境の変化を待って実行するというものですから、量的緩和政策解除のようなダイナミズムはなく、ほとんど興味がないものですが、最近の日経紙の報道が日銀の書かせ記事であるにも拘らず、それに気付かない方が多いようですから警鐘の意味で記載したものです。最近は骨のあるプロがいなくなったなあと残念に思っております。

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米国”予防的な”利上げ停止Part2

前週に引き続き米国金融政策について記載しよう。日本のエコノミスト、ストラテジスト及びマスコミは、5月10日に実施された米国FOMC(連邦公開市場委員会=年8 回開らかれる米金融政策の最高意思決定会合)の結果を受け、今後の同国金融政策についての意見を表明しているが、平たく言えば『利上げするかどうかは判りません』ということしか言っていないのではないか。今後の米国FOMCについて、米国内でも意見は割れている。しかし、前提条件を付けても一つの方向性を大胆に指し示すべきではないか。それでこそプロフェッショナルと言えるだろう。小生は、これらの人々への批判を込めて当該記載を行うこととした。

□ 5月10日FOMCの報道

米金利5%へ引き上げ(共同通信)
 【ワシントン共同】米連邦準備制度理事会(FRB)は10日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、約5年ぶりに年5.0%とすることを決め、即日実施した。終了後の声明はインフレ防止のため6月以降の引き締め継続を示唆すると同時に、景気見通し次第での利上げ見送りにも含みを持たせた。 
[共同通信:2006年05月11日17時10分]

色々な報道や分析があったが、概ね上記のような記載が多かった。次回のFOMCは6月30日に行われる訳であるが、その際に利上げがされる可能性が高いと共同通信記者は見ているようだ。但し書きとして景気が後退する見通しとなった場合には利上げを見送る可能性があるとはしているが、五分五分ないしそれ以上の可能性で利上げされると言うニュアンスと受け取れる。

□ FOMC声明文の原文

マスコミ等の分析が本当に正しいか声明文の原文をみてみよう。英語の日本語訳は苦手ですので、稚拙な部分はご容赦されたし。

Release Date: May 10, 2006
公表日時:2006年5月10日

For immediate release
即時公表

The Federal Open Market Committee decided today to raise its target for the federal funds rate by 25 basis points to 5 percent.
連邦公開市場委員会は、今日、フェデラル・ファンズ・レートのその目標を25のベーシス・ポイント上げ5パーセントとすることを決定しました。

Economic growth has been quite strong so far this year. The Committee sees growth as likely to moderate to a more sustainable pace, partly reflecting a gradual cooling of the housing market and the lagged effects of increases in interest rates and energy prices.
経済成長は今年これまで非常に強かった。委員会は、今後の成長について、住宅投資の沈静化および金利とエネルギー価格の増加による影響が徐々に反映されることで、持続可能なペースに緩和される可能性が高いと見ています。

As yet, the run-up in the prices of energy and other commodities appears to have had only a modest effect on core inflation, ongoing productivity gains have helped to hold the growth of unit labor costs in check, and inflation expectations remain contained. Still, possible increases in resource utilization, in combination with the elevated prices of energy and other commodities, have the potential to add to inflation pressures.
まだ、エネルギーおよび他の商品の価格中の上昇に対して、中核物価指数(コア・インフレ)は適正水準に止まっており、生産性の上昇が持続することで労働コストの上昇を防いでいますが、インフレ期待は残っています。まだ、資源活用が増加増加することで、エネルギーおよび他の商品価格の上昇を経過して、インフレ圧力を加速させる可能性があります。

The Committee judges that some further policy firming may yet be needed to address inflation risks but emphasizes that the extent and timing of any such firming will depend importantly on the evolution of the economic outlook as implied by incoming information. In any event, the Committee will respond to changes in economic prospects as needed to support the attainment of its objectives.
委員会は、インフレ危険に取り除くために政策を若干さらに一層に利上げすることがまだ必要かもしれないと判断するが、その水準とタイミングは今後の経済予測に依存することが重要です。どんな場合も、その目的の達成を支援するために、委員会は求められるような経済展望の変化に対応するでしょう。

Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; Timothy F. Geithner, Vice Chairman; Susan S. Bies; Jack Guynn; Donald L. Kohn; Randall S. Kroszner; Jeffrey M. Lacker; Mark W. Olson; Sandra Pianalto; Kevin M. Warsh; and Janet L. Yellen.
FOMC金融政策変更への賛成は次のとおりでした:ベンS.Bernanke(議長);ティモシーF.Geithner(副議長);スーザンS.Bies;ジャック・グイン;ドナルドL.Kohn;ランドールS.Kroszner;ジェフリーM.Lacker;マークW.オルソン;サンドラPianalto;ケヴィンM.Warsh;またジャネットL.Yellen。

In a related action, the Board of Governors unanimously approved a 25-basis-point increase in the discount rate to 6 percent. In taking this action, the Board approved the requests submitted by the Boards of Directors of the Federal Reserve Banks of Boston, New York, Philadelphia, Cleveland, Richmond, Atlanta, Chicago, St. Louis, Minneapolis, Dallas, and San Francisco.
関連する行為では、知事の委員会は、満場一致で25のベーシス・ポイント増加し、6パーセントに公定歩合を引き上げることを承認しました。この決定に際して、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーヴランド、リッチモンド、アトランタ、シカゴ、セントルイス、ミネアポリス、ダラスおよびサンフランシスコの各連邦準備銀行の提出された許可をFOMC参加者が承認しました。

前回の声明文との比較で変更した箇所で最も重視するポイントは、文中の赤字のyet という文面が加わったことだろう。単に一つの単語が入っただけであるから、足許の金融政策とほとんど変化がないという捉え方をしているようだが、小生は大きな間違いと考えている。次のフレーズが重要で、前月末にもバーナンキが表明しているように、利上げが継続するかどうかは経済指標次第であるとの表現である。これが重なることで、『経済指標が予想外になった場合には利上げがありうる』という表現に変わったと考えるべきではないか。それまでは利上げすることがコンセンサスであったという所から考えれば、利上げ停止方向に大きく舵を切ったと見るべきと考えている。

□ 米国利上げ停止できない場合とは

米国経済指標で重視すべきは、消費者物価指数であることは自明であろう。それも5月に発表される数字よりも6月に発表される5月の数字の影響の方が大きい。3月の消費者物価指数(食料・エネルギーを除く)は前年比+2.1%であった。これが+2%以下になれば当然利上げ停止されるし、横ばいでも停止されるだろう(理由は前回記載をご参照されたし)。

その点から考えれば、米国が利上げを停止できないのは消費者物価指数の伸び率が加速した場合に限られる。尚、消費者物価指数の伸び率が加速した場合においても、利上げを停止する可能性があると考えている。中間選挙を控えていることもあるが、それは次章に記載することとしよう。

□ 米国がG7以降にドル安容認となった理由

G7以降、米国は明らかにドル安容認(特にアジア通貨に対して)姿勢を貫いている。このことと、利上げ停止の方向性は完全にリンクしていると考えている。

その理由は端的に言うと、GMである。GM問題については昨年の今頃に大きく問題となっていたが、最近は騒がれなくなった。しかし、最近の円安ドル高で日本の自動車会社との競争力は低下の一方であり、燃料費効率が悪いことから原油価格上昇もネガティブ要因である。実は昨年よりも経営状況は悪化の一途を辿っていると言える。仮にであるが、米国の経済が大きく減速した場合、GMに与えられる悪影響は小さくはあるまい。

かつて、日産自動車が経営悪化となった時、日本政府は或いは日銀はどのような行動を取っただろうか。その時に現FRB議長のバーナンキFRB理事は日銀の緩和姿勢の非積極性を強く批判した。因果応報である。今度はバーナンキが我々日本人から批判される状況にあるのかもしれない。

読者にとっての興味は米国金融政策ではなく、日本の金融政策であることは、サイトの閲覧状況からはっきりしています。次回はそれを取り上げようかなと思います。
今回は少し手抜きでありましたので、まあそのお詫びという感じとなるでしょう。

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米国”予防的な”利上げ停止か

毎度のことではあるが、前回記載から相当に間隔が空いてしまった。水準も相場状況もそれ程変わらなかったため、丁度良かったかもしれない。さて、今回は前々回の記載と同様のものとなるが、この所、顕著となっている米国の利上げ停止に関することを記載しようと思う。小生は次回FOMC(5月10日)に利上げが停止された場合、これを”予防的な”利上げ停止と呼ぼうと考えている。

□ 米国中立金利の議論について

Us_realrate

図は米国の政策金利であるFF金利誘導目標と同金利の実質金利(=FF金利誘導目標 - 食料・エネルギーを除く消費者物価指数の前年同月比)の推移を示したものである。2001年9月11日に同時多発テロが行われ、米国金融政策に緊急避難措置が講じられたため、今回の利下げ及び利上げのサイクルについては中立金利の議論から除外すべきと考えた。従って、利上げ停止の中立金利として妥当な期間は、前々回の利上げ打ち止めの1995年2月から、前回の利上げ打ち止めの2000年5月の水準が参考となると考えた。

前述の中立金利としての妥当期間における実質金利は平均で2.98%であった。加えて当該妥当期間の開始時点の実質金利は3.00%である。2006年3月時点の実質金利は2.65%であり、次回FOMCで+0.25%の引き上げが行われると、2.9%と中立金利の水準にほぼ並ぶことになる。この点から、中立金利に接近したと考えることができる。尚、中立金利に接近していること点については、前回FOMCの議事録で多くのメンバーが認識していることが明らかになっている。

□ FRB議長が交代したことで利上げ政策が変更された可能性

1995年2月の利上げ時において、実は利上げを行い過ぎたことにより、景気を冷し、景気後退を招くオーバー・キルの危険性を高めたことが知られている。そのため、1995年2月に利上げ後の僅か5ヵ月後の同年7月に利下げに追い込まれた。今回の利上げ局面でこの過去の例を反面教師として、一旦、停止に向かうのだと考えられる。

しかし、小生はFRB議長が交代したことで、金融政策の変更方式が変わった可能性があると考えている。Gスパン前FRB議長の時は、金融引き締め時においては景気後退のサインが出るまで引き締め政策を継続し、金融緩和時においてはインフレ懸念のサインが高まるまで緩和政策を継続する傾向があった。このため、Gスパン前FRB議長の時代においては、政策金利の変動が大きく、市場金利や株価の変動を激しくしたというような批判が一方である(勿論、当然ではあるが、その効用や功績もある)。

景気後退まで金融引き締めを持続することや、インフレ懸念台頭まで金融緩和を持続することは、その変化の見極めも当然必要であるが、最も重要な問題は市場がFRBの金融政策を信頼するか否かという問題も大きい。このような金融政策が可能であったのは、Gスパン議長のカリスマ性があったことに相違ないだろう。

バーナンキ議長のそのようなカリスマ性があるだろうか。勿論、その可能性はあるが、現在は獲得しているとは言い難く、また、バーナンキ議長自身もそう考えているのではないか。そのため、程ほどの水準で金融政策を停止するというスタンスになったと考えている。

□ 今後の米国経済と金融政策について

今回の5月で利上げを停止したとしても、それは一時的な停止であり、利上げの打ち止めではないという主旨の発言をバーナンキ議長が連休前に行っていた。これは今後にインフレ懸念が強まった場合に利上げのオプションを残すための発言と見ており、本筋は米国経済の後退を危惧し始めているということと考えている。

米国経済の状況を見る場合、GDP、ISM及び雇用統計等の経済情勢から語られることが多い。確かにこれらの状況は米国経済の好調さを示しており、小生が考えるような景気後退を示唆するサインは見受けられない。しかし、内容を見る限り、景気の持続性に疑問が持たれるのは確かだ。

現状の米国経済の好調さは、不動産価格上昇に伴う個人消費の好調さに加え、昨年のハリケーン被害の復興需要が主なものと考えている。一方、米国製造業において特に顕著であるのが、自動車産業で、原油価格上昇でその競争力が削がれている。加えて、最近の金融引き締めでドル高傾向が高まっており、これらの産業からドル高政策の是正の圧力が日に日に強まっている。4月21日のG7で、経済不均衡が指摘されたことに反応してドル安傾向が強まっているのも、このような背景があるためである。今後も不動産価格上昇を背景とした資産インフレを恐れて、利上げを継続した場合、米国自動車最大手のGMはどうなるだろうか。その点を考えれば、利上げを早期に打ち止めする必要性が高まっていると考えることが妥当であろう。ちなみに、GMの問題は単なる一企業の問題ではなく、米国製造業全般に同種の問題を孕んでいると考えて方が良いだろう。

以上を踏まえると、5月10日のFOMCで利上げ打ち止めが示唆された場合、景気後退に対する”予防的な”利上げ停止と考えている。尚、利上げ打ち止めが遅れた場合、中立金利を上回る金融引き締めが行われる可能性が高まることになり、景気後退に陥る可能性が高まり、早期の金融緩和が必要になると考えている。

久しぶりの記載であるため、ネタには困らなかったのですが、結論を纏めるのに些か苦心いたしました。それにも増して、Graph作りに時間がかかり大変でした。会社のDataベースやベンダーを利用できませんでしたので。今後も、不定期に更新いたしますが、宜しくお願い致します。

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