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大局観を持って日本の金融政策を考えるべし

  兵法(孫子であったか)において、平原で戦う場合、高地に陣取れというものがあったと記憶している。これは高地に陣取ることで、敵陣の情報を得る等で大局観を持って戦うことができ、その点の優位性を説いた物と考えている。金融政策においても、高地から見渡すことは必要ではないか。最近のマスコミ報道(特に日経)を見ると、この点に欠けているように思われる。木を見て森を見ずでは、真理に辿りつけないと考え、本記事を記載するものである。

□ 足許のデフレ懸念

  日経等は、日銀の鷹派的(金融引き締め的)な姿勢を批判しているのは、消費者物価指数が足許でマイナスになっていることに他ならない。5月25日に発表された4月全国消費者物価指数は前年比▲0.1%と、3月の▲0.3%から改善したものの、依然としてマイナスである。物価がマイナスであるから、デフレ傾向は改善していない(或いはその可能性がある)ということが、デフレ懸念を重視する論を支えている。

  足許のマイナスの要因は、一年前に上昇していた原油価格が一服していたことに加え、ハイテク製品の下落の影響が大きいと考えている。PC等の物価を計算する場合、その性能を考慮する。例えば、同じ価格であっても性能が2倍になっていれば物価は半分(物価上昇率は▲50%)となる。現在、液晶TV、PC及びDVD-Rの物価は前年比▲20%と下落が持続している。小生はこの物価下落を需要不足が原因とは考えおらず、技術の陳腐化が招く価格下落と考えている。半導体の集積度におけるもので、”ムーアの法則”というものがある。およそ2年程度で半導体の集積度が2倍になるというもので、技術改革の進展速度の速さを示したものであるが、物価にとっては技術の陳腐化に伴う下落要因とは言えまいか。2年で性能が2倍になるということは、2年の物価下落が50%であり、一年当たりに換算すると、ハイテク製品が20%の下落を持続させていることも頷けるのではないだろうか。

  物価のマイナスを問題にするならば、この点を排除すべきなのではなかろうか。

□ 先行きのインフレ懸念

  先の問題と表裏一体であるため、整理不充分の論理展開をご容赦願う。

  物価が下落が常に問題となる訳ではなく、物価が下落しても利益が稼げれば(経済面で言えば、GDPの拡大が持続すれば)問題とはならない。量的緩和時代に金融緩和が必要とされていたのは、GDP(特に名目GDP)が低迷していた面が理由として大きく、銀行の不良債権問題の影響もあり、企業に必要な資金が行き渡らない可能性があったため、と考えている。現在は、GDPが低迷している訳ではなく、勿論、企業に必要な資金が行き渡らない情勢ではない。従って、金融緩和状態が必要ではなくなっている。

  金融緩和状態が必要でなくなったに止まらず、金融引き締めに動いている理由は、先行きのインフレ懸念が強まっているため。成長率(GDP)においては過熱感は出ておらずこれ以外の理由を以下に列挙する。

  • 中国の景気過熱や欧州に景気過熱感が出ていること
  • 為替の円安傾向が持続していること
  • 原油価格上昇がバイオエタノール導入に影響を与え、一部食物価格(マヨネーズ等)を上昇させていること
  • 新卒採用に過熱感があるように先行きの人手不足懸念があること

以上から、先行きの物価上昇圧力は相応にあると考えている。

□ インフレ懸念以外の引き締め理由

  インフレ懸念以外に留意すべき理由とは、資産価格の上昇を早めに抑えないと、反動の資産価格下落が大きくなるということである。バブル期然り、ITバブル期然りである。現在の日本国内において、資産インフレが大きい訳ではないが、中国等の世界的なバブル傾向は誰しもが否定しないものだろう。ちなみに、日本人がこれらのバブルを引き起こしている面があることを認識しているだろうか。投資信託などを通じて、日本人の対外株式投資が拡大している。現在の円安傾向もこれを背景としている。円キャリー・トレードが世界的なリスクとして認識されているが、これを最も行っているのが日本人であることを認識すべきであろう。

  日本人が対外株式を行うことを否定する訳ではないが、日本の金利が必要以上に低い状況に据え置かれると、対外株式投資の相対的なメリットが強まり、また”赤信号、皆で渡れば怖くない”との如く、相対的にリスクの過小評価が発生する。この点を正常に戻すことで、先行きの中国株等のバブル崩壊に備えたいということが本音である。

□ 今後の金融政策について

  今後についてGDPを重視すべきというのは、前回記事に記載した通りである。GDPが潜在成長率以下に低下すると、需要が供給を下回っている格好となるため、デフレへの回帰が懸念される。従って、GDPが2%以上を保つことが金融引き締めに求められる。一方、消費者物価指数については、マイナス幅が加速するか、企業が必要な資金を調達できなくなる事態にならない限り、それ程気にする必要はないだろう。

  これらに加えて、利上げのペースについては株価と為替の円安の双方を睨んで行うこととなるだろう。円安についてはドル円だけではなく、ユーロ円等の他通貨も重視すべきである。株価については過熱感はないが、足許で円安傾向が強まっており、これが加速するようであれば、日銀は金融引き締めを急がなければならないかもしれない。

  個人的には日本は、実質政策金利(=政策金利‐物価上昇率)で+1.0~+2.0%の居所を探るべきと考えている。年度内に3回の利上げが必要と考えているが、『物価がマイナスなのに金利を引き上げるのはけしからん』という論調から、従前の6ヵ月ペースを余儀なくされ、2回に止まると読んでいる。ちなみに、2回の利上げでは先行きのインフレ沈静には不充分であり、人々はインフレーション若しくはスタグフレーションに備えた投資や生活態度が必要となると考えている。

記載間隔が空いていましたが、状況が変化してきたことで記載いたしました。世界情勢が変化していることもありますが、小生個人の業務に余裕が出てきたためです。今直ぐバブルが崩壊するとは言いませんが、そろそろ外国株運用は慎重になった方が良いと考えています。そこそこ金利も高いので今一度対外債券投資に基軸を戻した方が良いように思います。勿論、長期債ではなく、MMFなんかの方がベターと思います。(ちなみに小生は対外資産の保有がゼロですので、この点も踏まえてご自身でご判断願います)

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