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中央銀行はインフレ沈静できるか

およそ11ヶ月ぶりの記載で活動再開致します。採り上げるテーマは『中央銀行』についてです。中央銀行の最も重要な責務はインフレ沈静(物価安定)であります。しかし、この所、その責務を果たすことに懸念が起きています。この点を私見で分析したいと思います。

□ 金融政策の基本的な考え方

  金融政策によるインフレ沈静のメカニズムを簡単に言えば、金利を引き上げることで国内の需要を後退させることにある。つまり、

  1. 金利上昇で資金の借り入れを抑制=設備投資の抑制
  2. 金利上昇で預金運用の優位性確保=消費者商品購入の抑制

ということを狙ったもので、特に2の効果が大きい。

  更に噛み砕くと、金利が1%の時と金利が10%の時を比較すると、100万円は1年後に101万円と110万円である。物価上昇率が5%の場合、100万円のものは1年後に105万円になっている。金利が1%の時に一年後に当該商品を購入するのに4万円の追加金が必要であるのに対して、10%の場合には5万円の資金余剰が発生する。このため、金利が10%に引き上げられると、一年待ってから購入した方が有利になるため、需要の後ズレを生み出し、足許の需要を沈静化させる。

  以上より、中央銀行は物価上昇率(期待ベース)よりも市中金利を大きくすることで物価を抑制するということを意図しているものです。基準とする物価上昇率として消費者物価指数を利用され、政策金利と消費者物価指数上昇率(前年比を使用することが多い)との差を実質金利と呼び、実質金利を大きくするようにコントロールする。

□ 足許の物価上昇要因

  足許の物価上昇要因は原油価格上昇が主因であることは言うまでもない。WTI原油先物で数年前は1バレル=20ドル前後であったが、今では100ドルを突破し、更に上昇を持続している。原油価格が上昇することで、物流費の上昇(ガソリン代の上昇等)を促し、他の製品の物価上昇に波及している格好。

 原油価格の上昇は以下の通りと考えている。

  1. 中国等の新興国が経済成長に伴い大幅に需要を増加
  2. 原油は限られた資源であり、投機的な対象となり易い
  3. ドルの下落見通しを背景に、対ドルでの原油価格上昇に歯止めがかからない
  4. 株価下落、金利低下で投資対象を失った投資資金が原油市場に流入
  5. 産油国が供給増に対して消極的(価格が上昇すればむしろ少量で良い)

□ 米国中央銀行(FRB)の金融政策

  米国中央銀行(FOMCにて)は景気後退懸念を背景に政策金利を引き下げ、4月30日には更に25bp引き下げ2%に引き下げる見込み。一方、米国の物価は消費者物価指数(食料・エネルーぎーを除くベース)で前年比+2.4%とこれを上回っている。

  更に、FRBは、サブプライムローンの対策として大量の資金供給を続けている。このことは、現金の実質的な目減りを促す。商品価格に対して相対的に現金が目減りすることはつまり物価を上昇させる。加えて、ドルが対外通貨に対する目減りしていることを通じてドル安が進行し、輸入物価を押し上げている。

  以上を踏まえると、米国はインフレを沈静化させるどころか、助長させる政策を採っている。当然、理由はあり、それだけ現在の米国金融機関の情勢が危機的であること。

□ 米国が金利を引き上げればインフレは沈静化するか

答えはNO
ドル安に歯止めがかかることで、ある程度インフレに歯止めをかけることは可能であろうが、沈静化までは至らないであろう。理由は以下の通り

  1. 米国の国内需要は後退するが、世界需要(特に新興国)は変化しない
  2. 預金金利が魅力的になるまで金利を上昇させると、新規投資停止を通じて景気を後退させる
  3. ドルの下落に歯止めがかかるも、サブプライムの痛手でドル上昇には至らず
    (基軸通貨としてのドルの地位低下を回復できない)

□ 中央銀行は自国のインフレ沈静には無力

  日本において、政策金利が0.5%に対して、消費者物価指数(除く生鮮食品ベース)は前年比+1.2%となっている。日本の政策金利を1.2%以上にすればインフレを沈静化できるであろうか。答えはNOである。

  日本の金利が上昇しても世界的なインフレ沈静には無力である。むしろ、景気を減速、後退させることを通じて自国通貨の売(円安)を招く恐れがあり、短期的にインフレを進める恐れすらある。 ではどうすれば日本のインフレは沈静化されるかであるが、世界経済のインフレを沈静化させる必要があり、世界各国が協調して金利を上昇させる必要がある。世界界各国が協調することは考え難く、自国の利益を優先させることは間違いないだろう。G7でも困難なことが世界でできるとは思えない。特に中国が自国経済を犠牲にして利下げするとは考えられないだろう。

  自国の物価上昇率を基準とする金融政策は無意味だと考えている。インフレターゲット論が余り聞かれなくなったのもこのような背景があるのだろう。バーナンキFRB議長もインフレターゲットも引っ込めざるを得なくなっているのではないだろうか。

随分久しぶりになってしまいました。ここ半年程、分析の仕事から外れていたため、暫くは纏まらないコメントも多いかと思いますが、お付き合いの程、宜しくお願い致します。4月から市場部門に復帰しておりますので、請うご期待ということで。

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