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最近の円高(1ドル=90円台)について

10月以降の急激な円高をテーマに現状整理をしたいと思います。株安(過去3回株安がテーマ)にも影響がありますし、そもそも小生の職務はこの関連の方が強いのです。為替絡みで損失を被っている方も多いと思いますので、ご参考になればと思います。

□ リーマン発金融危機の影響

先月(2008年9月)にリーマンブラザースが破綻したことが全ての始まりであることは言うまでもない。これにより、世界の金融機関の資金繰りが急速に悪化。要するに、金が借りれなくなったため、資産・負債を整理(バランスシート調整)を行っていることに他ならない。更に、リーマンに代表される米国投資銀行は、財務レバレッジ(=負債/資本)を桁違いに高め来た(モルガンスタンレーは80倍の財務レバレッジであった)が、それに対する批判も強く、改めなければならない状況に追い込まれている。米国の金融機関に限らず、資金繰りが付かないということか、財務レバレッジの縮小ということは別にして、資産の投げ売りと負債の圧縮を行っている。

よく聞かれることであるが、『金融危機になると何故円高になるか』ということについて解説する。世界の金融機関は負債調達のため、低金利の円を借入していた。多くの場合、通貨スワップでドル借入に変更していたが、一部では通貨スワップを行わない、つまり為替リスクを追う形での円借り入れをしたいた。為替リスクを負う円借り入れを行っていた人間が負債を圧縮すると、円を買い戻すため円高になるということが判り易いだろう。実は、前述の多くの場合の通貨スワップでのドル借入の部分にも問題がある。専門的(不親切な説明をご容赦されたい)になるが、ベーシススワップ(簡単に言うと、円LIBORとドルLIBORの交換)が内包されており、これが無茶苦茶な市場となっている。3か月毎に変動金利である円LIBORとドルLIBORを交換するのであるため、概ねゼロ近傍で安定した取引であるが、金融の混乱でASK-BID(売-買)気配の差が10bp(0.1%)超となり、その変動も大きくなっている。これに耐えきれなくなっているため、この処分を行っているのである。このような方が円負債を返却するとことは、足許での円買と将来(当初の負債償還時)の円売を同時に行うこととなる(=足許のドル買と将来のドル売)。現在のベーシスにおいてこの反対売買を行うと、金融機関にとって利益になることもその動きを加速させている。ドルを借りてドルを円に転換すると同じ動きとなる。将来のドル買を同時に行わなければならないが、円の先高がみられる現状において…。

上記は米ドルにおいて記載したが、ユーロに対しても、英国ポンドに対しても、豪ドルに対しても、その他全ての通貨に対しても同様の状況下にあることが言える。全ての通貨に対して円高になることもあり得る話であろう。

□ 日本の政治の無能

この状況下で、日本政府は拡大財政を計画している。リチャード・クー氏がブレインなので致し方ないのかもしれないが、愚かとしか言いようがない。日本の財政で世界を支えられるはずがなく、発想としてはB29に竹やりで向かおうとしている時と同じに見え、滑稽である。後年、批判されること必至の愚策となるだろう。

さて、『何故、拡大財政が駄目か』について記載致したいと思う。多くの政治家は円高で輸出が駄目になり、外需に頼れないから内需でと考える。これが大間違いである。経済学をかじった人間ならば良く理解されていると思うが、拡大財政は短期的に自国通貨高つまりは円高を招く(=マンデル・フレミングモデルによる、尚、然る後に通貨の調整機能で円安に回帰)。円高の時に更に円高になる政策を取っているのである。少なくとも他国が同様の財政拡大を意図しているのでない限り、このような政策は採るべきではないと考える。

次に行おうとする政策として、為替介入=円売介入を画策するだろう(外貨投資をしている人は期待)。しかし、他国が日本の為替介入を認めるはずはない。金融不況の中、インフレが加速する恐れはなく、通貨安への懸念が少ない一方で自国通貨安で輸出ドライブをかけることができる。これらは日本が失われた10年で行ってきたことである。苦しい時に日本の介入を認めていたのだから、同様の状況の他国が自国通貨安に頼っても批判はできないのではないか。

介入を期待している方がいるのであれば、売却した方が賢明であろう。

□ 日本の金融危機は円安要因?

日本の金融危機は円の信頼の欠如と考え気味であるが、現状においては円安要因ではなく、円高要因である。日本の金融機関も対外通貨建での借入を行っており、その点からは円安要因が全くないとは言えないが、日本の金融機関が保有する対外通貨建て資産が圧倒的に多い。日本の金融機関が資産と負債の整理に迫られるとすれば、対外資産の売却、つまりは円高の要因となることは改めて解説する必要はないだろう。

資金繰りの悪化していない金融機関についても対外資産の圧縮を迫られている。為替レートのボラティリティ(価格変動率)の大幅上昇がその要因である。金融機関は、リスク管理をする場合、ボラティリティを基準にポジション枠が決められている。ポジション枠いっぱいのポジションで運用している時にボラティリティが2倍になった場合、ポジションを半分にしなければならない(つまり半分を売る必要に迫られる)。為替のボラティリティは現在、以前の3倍以上となっている。フルにポジションを持っていた訳ではないだろうが、為替差損が発生していることもあり、外貨資産を半分程度処分している金融機関は少なくないのではないか。

□ 株安も円高要因

株安の結果、信用買いを行っている個人は追証の差し入れを迫られている。以前であれば、保有している資産は円建債券が多かったため、これを代用有価証券として差し入れすれば良かった。しかし、低金利の影響で保有債券は外貨建債券や円建てでも仕組み債となっていることが多く、代用有価証券として担保差し入れが認められない。このため、追証差し入れのために外貨建て債券の売却を行うことを迫られている。

小生も知らなかったことであるが、米国債であっても信用取引としての担保に認められていない。従って、このような連鎖的な悪化を招くこととなっている。担保の時価管理(もちろん円建)は必要であろうが、担保として認めないというのはグローバル化されていない閉鎖的な金融市場と言えないだろうか。このようなことを放置している、官僚、政治家は無能と重ねて言いたい。

□ CITICパシフィック社問題

以下のReuters 記事(21日付抜粋)

中国の複合企業CITICパシフィック<0267.HK>は20日、レバレッジを効かせた外国為替取引で20億米ドル近くの損失を出す可能性があり、2008年の業績に影響する見込みだと警告した。

詳細は示されていないが、これが豪ドルやユーロの急落を招いたたの指摘がある。利益予想が60香港ドル(10億米ドル程度)であることから、30億米ドルの損失を発生させたと推定される。豪ドルやユーロは2割以上対ドルで減価していることから、それぞれの通貨で米ドル100億ドル分のオプションの売を行っていたのではないかとの噂が流れている。記者会見の時点でポジションが閉じられていなかった可能性もあり、相場を大混乱に陥らせたのではないか。恐らくこれは氷山の一角であり、場合によっては日本の企業でこのような損失を表面化させることもあり得ると恐怖している。

□ 今後の懸念材料

本日(10月26日)、サンデープロジェクトで前原民主党議員が農林中金への懸念へ言及していた(本論ではないため、深堀されず残念)。農林中金はサブプライムで問題となっている証券化商品を大量に保有している。外貨建債券も大量に保有している。日本国債は余り心配ないのであるが、その中でも15年変動利付国債を大量に保有していると言われている。資産内容が棄損していると考えることが妥当であろう。更には、農林中金には金融庁の検査が入っていないことも問題(前述で前原議員が発言)。そのような状況下で農林中金への資産注入を認める法案が通った(正確には系統金融機関の上部団体であるため農林中金のみではない)。同じ番組で与謝野大臣は金融安定化枠が10兆円程度必要であるとの指摘をしている。これらの状況を証拠を重ねて、不安を感じないと言い切れる人はいるであろうか。与謝野大臣には10兆円が必要であるとの論拠を明確に示してほしい。

そんなことは起きてほしくないが、日本の金融機関に直接的なサブプライム問題が波及した場合、株価は更に下がり、円高がさらに進行する懸念がある。

最大の懸念は、悪いことをキチンと国民に知らしめていないということである。

最近、文章を書く業務が減っているため、どうも纏める能力が欠如し、読み難い文章だと思います。時間をかけると、情報の価値が減ることもあり、不完全な形での提供をご容赦いただきたいと思います。皆様のお役に立てているとすれば幸甚です。

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