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デリバティブ汚染列島 2 (全ての方に捧ぐ)

株・為替ともに値動きに乏しく次への展開待ちとなっているようですので、前週と同じテーマを取り上げたいと思います。山崎元氏の『金融マンにカモにされる大学駒澤大と立正大は氷山の一角』から抜粋する形で小生なりの記載を致します。今回は経済という側面での記載ではないものになると思います。

□ 山崎元氏を批判する

前回、小生は当問題の記載を“タブー”と表現。これは、卑しくも金融関係で働くものが、デリバティブについて『デリバティブ自身が、デリバティブを提案・組成した金融機関が、デリバティブを実行した投資家自身が問題である』と受け止められるようなことをしてはならないと考えたためである。そのことはデリバティブの存在を否定するものであり、自分自身を否定することに等しいからである。ましてや、その取り引きから得られた利益から自身の給与が支払われていることを自覚すべきではないか。

トレーダーやアナリストの中にフロントの取引を批判する者がいる。小生はこういう人間(法令違反の場合を除き)が大嫌いである。自分の手は汚さずにその上前だけを跳ねているのにも関わらず、その自覚をしていないからである。例えるならば戦争において自分は安全な所にいる司令官のようなものである。小生の経験上、こういうタイプが真っ先に裏切るように思う。

□ デリバティブ取引の特性(相互与信)

山崎氏の記載に『(損切りが出来た事には拍手を送りたい)』というものがあった。このことから、専門家を自称するものもデリバティブの商慣習に明るくないことがはっきりした。

デリバティブ取引(SWAP取引などの狭義の意味)が相対取り引きであることは言うまでもない。このことからデリバティブ取引においては、お互いに与信行為(平たく言えば信用リスクが発生すること)が発生する。投資家サイドからすれば仕組債を購入することと同じ仕組のデレイバティブ取引を行う行為の違いは、仕組債の発行体リスクがデリバティブ相手の信用リスクに代わるだけ。しかし、業者サイドからすれば別である。発行体に対して発生していた信用リスクが投資家に対する信用リスクに代わる。

一般的に、
発行体の信用リスク < 投資家の信用リスク
信用リスクが大きい投資家に対して、各金融機関は契約により対策を講じている。個別の契約であるため個別の事情は異なるが、概ね追加担保差し入れの契約になっていることが多い。これはデリバティブの含み損が一定以上になった場合に担保差し入れを求めることが一般的である。デリバティブの含み損が50億円以上になった状況では追加担保差し入れ条項に抵触したことは間違いない。現金がある時はそれで対応していたが、含み損が150億円に達すると、現金が底を付き追加担保差し入れができなくなったのだろうと思われる。

担保差し入れができなかった場合、契約は強制解約になる。一部には担保差し入れに関わらず、損失が巨額になったということで強制解約になるとの契約もあると聞いている。10月にはこれらの強制解約が横行していたものと想像される。

クーポンスワップで強制解約になると、契約相手の金融機関はヘッジで購入していた外貨を売却することになる。10月に大幅に円高が加速(特にユーロ円や豪ドル円)した理由の一つにこれらの強制解約があったことは想像に難くないだろう。

ちなみに、ドル円でもクーポンスワップは行われているが、強制解約の事態に陥っている先は少ないと思われる。ドル円は100飛び台から90円台と10%程度の円高に留まっていることが大きいと思われる。80円台になるとこの種の解約が増えると想像している。現在、ドルPUTとCALLのインプライド・ボラティリティを比較すると、PUTサイドが大幅に高い。これは円高加速を警戒してデリバティブ契約を解消する動きの一端と思われる。

□ 大学の置かれる環境

教育が本業である大学が運用を行うこと自体が間違いとの批判があるが、あなたが大学の担当者であったら本当にそれを選択できるだろうか。現在、日本は少子化の影響で大学入学者がどんどん減っている。このため、本業のみの経営においては、パイの取り合いに過ぎず、構造的に徐々に苦しくなっていくことは自明である。このため、資産がある大学(教育法で校舎を自前で持つこととされているはず)が資金を借入運用を行うことは、雇用を守る上でも必要なことではないかと考えている。

しかし、デリバティブ等の高いリスクの運用をすることもなかったとの批判もあるだろう。これについても理由はある。日銀が過去10年以上に渡り、政策金利を0.5%以下に保つ低金利政策の持続がその弊害である。一定の金利が維持されていれば、その預金金利のみで大学の財政は潤っていたはずであるが、堅い運用をすればするほど、財政は厳しさを増して行ったのである。年金問題に続き、大学の資産運用面でも低金利政策の弊害があると考えている。小生は低金利政策の有用性がなくなっているなか、これらの弊害が小さくなくなっていると感じている。残念ながら皆を納得させるだけの論は揃えられないが、一度この点を考えて欲しいと思っている。

□ 最後に

最後に駒沢大学の担当者が今行方不明になっていると聞いたことについて記載する。理事会を通じての運用決定であるはずであるため、一担当者が責任を感ずるものではない。当問題について記載される方は、この点に配慮しつつ、触れてほしいと思う。

小生は人のことを批判できる程の者ではありませんが、先週危惧した通り、表面のみで当該問題を語る専門家がいたことで本記載を致しました。前週の記事は多くの方に読んで頂いた記事であったため、逆に責任を感じこのような形の記載となりました。問題の本質を考えて頂けるようお願い致します。

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