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日銀利下げは誰がため?(不況にあえぐ国民に捧ぐ)

”日本経済”の冠を頂ながらも、日銀の利下げについて全くのノーコメントでした。マスコミの報道を見ていると、利下げの是非よりも0.2%(通常は0.25%)であったことへの指摘が目立ち、キチンとした分析がされていないように感じます。利下げに効果がないことが自明ではありますが、改めまして私見を記載致します。

□ 協調利下げの効果がない理由

以前の記載記事の文中から抜粋する。

『 各国政策金利は象徴的な金利、つまりはかつての公定歩合と同様となっており、実態金利を反映していない状況となっている。貸出金利=政策金利+クレジットスプレッド、という式をイメージしてもらえば良いと思う。政策金利が0.5%低下したとしても、それはクレジットリスクの増大を示しているため、クレジットスプレッドが拡大する形になる。クレジットスプレッドの拡大を上回る低下ができれば良いが、大抵の場合、クレジットスプレッドの拡大を緩和するための金利低下に過ぎない。従って、金利低下を行っても発熱に対する解熱剤程度の意味しかないことをイメージすべきと考えている。
事態の収拾をするためには、公的な機関が株式を購入することが不可欠である。 』

日銀が0.2%の引き下げを行えば、日本企業の資金繰りが改善するかは言うまでもないだろう。弊害はないが、効果は全くない。最近の株安で金融機関のバランスシートは悪化しており、貸出しを圧縮しなければならない圧力が強く、それに抗する効果は感じられない。実際、来月以降も貸出が減少する可能性が高いだろう。

日銀が行うべきは、株価が上昇させる施策か金融機関のバランスシートを改善させる施策である。今回、銀行保有株の購入を見送っている(総裁は検討するとのコメントをしているが)。優先すべきはこちらであることは明白で、何故、それを行わなかったのだろうか。

 『日銀は株価が更に下がると考えているのではなかろうか』

銀行保有株を購入後に株価が下落すると、日銀の信用力が棄損する。そのことは日本の金融機関や企業の資金繰りに悪影響を与える可能性を否めない。勿論、日本の信用創造がもっと危機的な状況となった場合には、即時実施されるものであろう。日経平均が8千円や9千円では危機的な状況とは言えない、と日銀が考えているとすれば…。

□ 効果がないのに各国が利下げする理由

金融システム回復効果が見込めないのに各国が利下げを行う理由は先行きの景気悪化を見込んでのことである。日銀も10月31日発表の展望レポートにおいて
 2008年度実質GDP予想 +0.1~+0.2(変更前+1.2~+1.4)
 2009年度実質GDP予想 +0.3~+0.7(変更前+1.4~+1.6)
 2009年度実質GDP予想 +1.5~+1.9(従前の発表なし)
と、経済成長を大幅下方修正させている。1%以上も成長率が減少するため、利下げを行うことは理に叶う。しかし、そもそも経済成長率が1.5%や消費者物価指数(コア)が+1.6%に対して政策金利が1.5%程度で運営されているならば、追加の緩和効果が見込めるが、既に緩和状態にある日本が追加の緩和を行ったとしてもほとんど景気の浮揚効果は見込めない。日本以外の国は別として、日本において効果がないため、10月初旬の会見で日銀総裁(本来、白川総裁と書くべきであるが、意図があり今後も日銀総裁と記載)も協調利下げに否定的であった。

協調利下げに否定的な日銀が利下げに踏み切った理由は為替の円高傾向にあるだろう。金融政策の効果として、為替レートの変化を通じた外需獲得がある。世界的な利下げ傾向が波及する前の米国において、金融機関がメタメタでしたが、製造業を中心に堅調であったのはドル安による外需獲得が寄与したためである。欧州が利下げに踏み切ったのはユーロ高是正の意図もあることは間違いあるまい。ちなみに、日銀が利下げしたことで為替の円高傾向が反転は不可能である。海外の利下げ幅が0.25%であるのに対して、日本は0.2%であり、今後の利下げ余地がほとんどなくなったことが大きい。円高のスピード調整には役立つが、それに止まるであろう。

これ以外にアナウンスメント効果が言われることがある。これは日銀の政策が過去から適切に行われ、市場の信認が厚い時に効果を発揮する。グリーンスパン時代の米国ならばいざ知らず、今の日銀にその効果はない。むしろ、逆アナウンスメント効果の方が強いのではないかと思う。特に、10月初旬の発言を1か月足らずで訂正し、利下げに踏み切った日銀総裁は信任することはないだろう。

□ 日銀の利下げを歓迎する人々

経団連は日銀の利下げを歓迎している。輸出企業の割合が多いため、為替の円高傾向を軽減する効果があるためである。しかし、円高是正の実効性は低く、諸手を挙げての歓迎ではないだろう。

政府は歓迎するだろう。日本の政治家は景気は過熱している程度で丁度良いと考えており、金融緩和は正義で、金融引き締めは悪という短絡思考の持ち主である。裏を返せば、金融緩和に頼って長期的に景気を浮揚させる政策を考え実行する能力に欠けていることを示している。

日銀が変心し、利下げに動いたのは、世界中から『日銀が利下げしないから経済情勢が悪化した』と言われることを恐れてのことと考えている。つまり、アリバイ工作に他ならない。従って、日銀自身は余り歓迎していないだろう。本音はしょうがないという所。

金融機関は歓迎するかどうかについては、個社の事情次第の面が強いものの、総じて歓迎であろう。円高、株安の是正方向であることよりも、公社債の価格が上昇することで不良債権の償却原資とできる点である。さりとて、抜本的に改善することでもないため、効果は限定的である。

個人はどうだろうか。総じて歓迎しないだろう。株や外貨に投資している一部の方は歓迎する面があるが、景気の浮揚効果が低いのにも拘らず、金利を引き下げられることは個人から他者への所得移転を意味する。今更の面があり、あきらめムードもあろうが、個人を犠牲にする政策と言わざるを得ない。

日銀の利下げを最も歓迎するのは海外勢であろう。現状は円高懸念があるため、日本市場からの借入を行えないが、為替が円高に振れた局面で借入を行うはずである。そのタイミングは足許直ぐではなく、円安への反転を確信した時となる。この点では円高の加速に抑止力を与えたということで、少しは評価して良いかもしれない。

余り興味のない話題とは思いましたが、久しぶりの金融政策変更でしたので記録のため記載致しました。合議制の金融政策決定は、平時について効果がありますが、今のような状況では弊害が大きいと考えています。どうしても後手に回ることが多いためです。10月31日に利下げを行うのであれば、欧米が協調利下げしたタイミングですべきだったと思いますし、タイミングが遅れたことを取り返すため、幅は大きめ(0.2%でなく、0.3%の引き下げとか)で行うべきだったと思います。日銀は何をやっても批判されるのであるから、積極的な対応を考えてほしいと感じています。

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