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デリバティブ汚染列島(円高は関係ないという方に捧ぐ)

デリバティブでの損は金融機関の専売特許ではありませんでした。教育機関(駒沢大学)や飲食業(サイゼリア)で相次いで巨額損失を発生させています。何れも為替のデリバティブ取引を実施し、円高が発生したため、発生したものです。今回はこれらを採り上げることと致します。

□ そもそもデリバティブとは

デレイバティブとは、ウィキペディアによると
デリバティブとは伝統的な金融取引(借入預金債券売買、外国為替株式売買等)や実物商品・債権取引の相場変動によるリスクを回避するために開発された金融商品の総称である。英語のDerivativesに忠実に、「デリバティブズ」と呼ばれることも多い。日本語では派生商品(はせいしょうひん)という。
デリバティブ(derivative)は、「誘導的な」「派生した」という意味である。

つまり『デリバティブはリスクを回避するために開発された』ということ。
しかし、現実にはリスクを回避するよりも巨額損失を発生させたり、損失の隠れ蓑として使われることが多いように思う。このため小生のイメージでは
デリバティブとは、金融業者が自身のリスクを顧客に転嫁するために或いは不透明な価格形成を利用して利益を稼ぐために開発された金融商品の総称
である。

ちなみに、デリバティブで稼ぐ金融業者を悪者扱いするつもりはない。個人投資家等の明らかに経済的な弱者を相手にしたのならば兎も角、卑しくも経済学を教える最高学府の大学と経済の中で利益を稼ぐことが求められる上場企業が騙されたとは思えない。自己責任が問われるものと考える。

□ サイゼリアのデリバティブ

サイゼリアの開示書類から抜粋する。

まず一つ目
① FX参照型豪ドルクーポンスワップ
(見込まれる評価損 71.3 億)想定レート65.00
・ 約定日: 2007 年10 月22 日
・ 約定月末日(2007 年10 月末)仲値=105.83 円/豪ドル(参考)
・ 支払日 : 2008 年12 月1日から2010 年11 月1日まで、毎月1日
・ 豪ドル約定金額 : AUD1,000,000
・ 約定レート : 第一回約定レート 78.00 円/豪ドル
ただし、FXが78.00 円以下の円高になった場合、それ以降の約定レートは以下
の式で計算される。
【前回約定レート】×【78.00/FX】円/豪ドル
下限=78.00 円、上限=600.00 円
・ FX : 各為替参照日の東京時間午後3時のJPY/AUD為替レートの仲値
・ 為替参照日 : 各支払日の5営業日前の営業日

一般的なクーポンスワップとは、一定期間毎(毎月や毎四半期など)に一定額の外貨を等しい為替レートで交換(輸出企業の場合は円貨を外貨に交換)することを約束した契約のことである。通常輸入企業は毎月発生する為替決済額に先んじて当該契約を行うことで、外貨金利差分だけ現在の為替レートよりも円高のレートで交換することができる。

上記約定時点の為替レートは101.40

2008年12月1日以降の為替レートが常に78.00よりも円安であれば、78.00で交換されることとなる。例示すると、
12月1日が適用FX=80であったとすると、78×78÷80=76.5で下限が78.00であるため、78.00が適用(実勢比2.00の得)される。その後も78以上が持続する限り、78で交換されるため、実勢レートよりも有利な(円高の位置での)為替交換ができる。

しかし、一度78.00よりも円高になれば地獄が始まるFX=60が持続するとして試算すると
2008年12月1日:78×78÷60=101.40(実勢比で41.40の損)
2009年1月1日:101.40×78÷60=131.82(実勢比で71.82の損)
2009年2月1日:131.82×78÷60=171..37(実勢比で111.36の損)
2009年3月1日:171.37×78÷60=222.76(実勢比で162.77の損)
2009年4月1日:222.76×78÷60=289.61(実勢比で229.61の損)
2009年5月1日:289.61×78÷60=376.49(実勢比で316.49の損)
2009年6月1日:376.49×78÷60=489.44(実勢比で429.44の損)
2009年7月1日:489.44×78÷60=636.27、上限適用で600(実勢比で540の損)
…以下16回同レート
損失見込みは105億円である。ちなみに、素直に101.40で交換していたら24.3億円であるため、約5倍のレバレッジがかかっていることになる。計算してから判ったが上記のレートを65で計算すると損失は93.7億円となり、会社の発表額より大きい。勿論、小生の計算は将来価値で行ったもので会社側の現在価値の方が若干小さくなることは間違いないのであるが、逆に現在の65の交換レートは理論的には将来円高方向に振れていくことになるためこの部分だけ控えめの計算となっていると言える。小生が計算を間違っている可能性があるため、確かなことは言えないが、損を小さくみせかけたと言われることのないようにしているかどうかは気になった。

次に二つ目
② FX参照型豪ドルクーポンスワップ
(見込まれる評価損 50.2 億)想定レート65.00
・ 約定日 : 2008 年2 月7日
・ 約定月末日(2008 年2 月末)仲値=98.93 円/豪ドル(参考)
・ 支払日 : 2008 年9月1日、2008 年11 月1日、2009 年1月1日、2009 年3月
1日、及び2009 年4月1日以降終了日まで、毎月1日、2011 年3 月1 日まで
・ 豪ドル約定金額 : AUD1,000,000
・ 約定レート:69.90 円/豪ドル
ただし、FXが69.90 円未満の円高になった場合、それ以降の約定レートは以下
の式で計算される。
【前回約定レート】×【69.90/FX】円/豪ドル
下限=69.90 円、上限=500.00 円
・ FX : 各為替参照日の東京時間午後3時のJPY/AUD為替レートの仲値
・ 為替参照日 : 各支払日の3営業日前の営業日

2008年2月7日時点の為替レートは96.00
2008年9月1日を92.2(69.9よりも円安であるため、69.9で交換、つまり利益)、2008年11月1日を67.0で、それ以降を60の前提とすると、損失は97.9億円。為替レート60を65に変更すると90億円。

以上の計算は為替レートが実際のものが異なる可能性があることを承知して頂きたいと思います。しかし、個人のFxトレーダーであってもこのようなことを自ら検証することは重要ではないだろうか。何よりも損をした人の話ほど参考になる話はないからである。

□ 駒沢大学の件

詳しくは『曹洞宗にもの申す』をご参照されたい。

これによると、あるいは各種報道によると、同大学は3月末現在で53億円の含み損をこうむっていたことになる。この損失が拡大し、含み損が154億円に到達しているそうである。契約額が100億円に対して含み損が154億円であることを考慮すると、レバレッジをかけている可能性が高い。駒沢大学も外資系との取引であり、それがサイゼリアと同じ会社であるかどうかは不明であるものの、同様の取引と想定できるであろう。

駒沢大学にしても、サイゼリアにしても最初からこのようなリスクの高い取引に傾斜していた訳ではないと考えている。冷静な判断を失わなければこのようなハイリスクは負わないはずである。恐らく、何かの取引で損が発生し、これを解消するためにこのような取引に傾斜して行ったのではないかと推定している。

やられている時ほど冷静でいられるか、このことが今回得た教訓のように思う

本件はタブーのようにも思いましたが、解説することに致しました。しかもそれが多くの方の役に立つとの確信はないものでした。しかし、自分の学んでいた学校が、或いは自分が食事している所が不当なリスクを負っているとすれば、それを許容できるだろうか。それは嫌悪されるのではないか、との思いから記載したものです。

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