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日米量的緩和政策を見通す(マクロ・エコノミストに捧ぐ)

今回は野口悠紀雄氏の『「日銀引き受けで25兆円支出増」という思考実験――パンドラの箱を開ける』を読み、日本全国ケイジアン化と公共投資拡大に走り始めたとの印象を受けました。小生はこれに対して限定的反対の立場(確実に波及効果を産む投資ができれば賛成だが、可能性がある程度であれば将来の足枷という弊害の方が大きい)で、この問題と量的緩和政策の双方を分析することを試みようと思う。

□ 米国量的緩和政策への足枷

掲題において、FRBと日銀での最も大きな差は何でしょうか?
日銀は国債買い切りを実施済みであるが、FRBは今後検討としている点である。FRBにとってみれば、CPを購入することよりも国債を購入することの方が遥かに抵抗感が少なく、容易に実施されるべきものと思うのであるが、何故だろうか?
この点を指摘している方が少ないように思う。(小生の理解が間違っているかもしれないが)FRBは資金調達を政府から委託しているため、国債を購入してもツイストオペ(短期債売・長期債買)の効果しか得られないということが大きいと思われる。それよりは、クレジット面でのサポート効果のあるCP買オペ(同時にTB売却)の方が効果的であるということが大きい。

纏めると、米国FRBは信用創造能力において日銀に劣るため量的緩和政策を推し進める上での問題を抱えているように感ずる。当然、小生よりも頭の良い人達のことであるため、何らかの対策を考えているとは思うが、その点が明らかにならない限り、積極的なドル売に躊躇せざるを得ないと考えるようになった(この点が前回記載の巻末で触れたミスリードの可能性)。

□ 日銀の限界

日銀はFRBに比べて信用創造能力が高く、積極的に国債の買入額を増やすことには抵抗感が少ないと思われる。しかし、CPの買い入れ増加や更なるクレジット・サポート策増強についてはどうだろうか。恐らく消極的にならざるを得ないと思われる。

この点については日銀の資本面での足枷と考えれば判り易いかもしれない。資本が脆弱な会社は積極的に投資を行うことはできない。今は十分に資本がある日銀も積極的にクレジット・リスクを負っていけば日銀自身の破綻リスクが増大し、日銀及び政府の資金調達コスト上昇という副作用を招くこととなる。この点を憂慮するため、日銀はクレジット・サポートに対して間接的な対応に終始して来たのだと理解している。

そういう面から言えば米国に背中を押されたとはいえ、CPの買いオペに踏み切ったことは評価できる。しかし、どちらかと言えば、より厳しい要求が来る前に機先を制したに過ぎず、今後は日銀の限界を目の当たりにするに連れて失望感に苛まれるであろう。

□ 金融庁・財務省(日本)は何をしている?

金融庁が特に農中を救うために変動利付国債を中心とする証券化商品の簿価評価を認めたことは問題の解決につながらないと考えている。確かに、金融機関の体力棄損を回避できるものの、結局、変動利付国債への豚積み状態に安住するだけで動かせない資産を構築しただけに過ぎない。

当該問題において、財務省が積極的に買い入れ消却に動かなかったことも問題と考えている。そもそも、海外勢に押されて導入した15年変動利付国債の市場が破綻していることは明らかであり、発行停止は勿論のこと、積極的に買い入れ消却+借り換え発行を行うべきであったと考えている。金利が低下している中で、15年変動利付国債の価格が下落していることでメリットが大きいのは国(財務省)であり、そこが買い入れ消却を行い、20年債などの超長期債を増加させることは長期的にはメリットが大きなものではないかと思う。何故、実行されなかったかは短期的に利払い費用を押し上げることが問題となったとすれば非常に残念である(検討すらされていない可能性もあるため、何とも言えない)。

財務省と言えば、個人向け国債の3年物を出すことを検討している様だ。それよりも小生としては15年変動利付国債などの個人販売をしてほしいと考えている。更には、個人向け国債について、元本保証は不要であるので市場価格で自由に売買できるようにしてほしいと考えている。金利が低下した時に国債の売却益(非課税)を取ることで利子源泉税を回避するということは個人投資家にとって数少ないデフレ下の運用手法である。これができない個人向け国債はメリットがあるようには思えない。特に金利が低下した所で個人を狙い撃ちにする所は出来の悪い金融セールスと何ら変わらないのではないだろうか。

少なくとも民間銀行が企業の間接金融を全て賄えない中、公的金融の拡大しかないと考えているが、『民業圧迫』の誹りを恐れて何もしないという状況を続けるつもりなのであろうか。最も、衆参ねじれの政府自体に妥当性のある政策を推しとおすだけの力がないため、政権交代まで何もしないというサボタージュであれば正しいかもしれない。

□ 日本の財政拡大について

日本の財政政策において公共投資を行うことには反対である。金額が独り歩きして波及効果が得られる投資などを考えられないのではないか。

そんなことはないという方には、東京ウォータフロント構想がどうなったか、東京湾横断道路の現状がどうか、本四架橋の現状がどうかを踏まえて考えてほしい。何れも計画段階では素晴らしい構想であったが、現実とは異なっている。そのような中で本当に素晴らしい構想があるならば投資しても良いと思うが、現時点で見当たらないということが正しい判断であろう。

短期的に抜群の効果を発揮するとすれば、『消費税減税』に他ならないと考えている。「消費税を減税すると将来の福祉の財源をどうするか」、とか「消費税を減税しても貯蓄にまわる可能性が高い」というような指摘が出るだろう。これについては以下に論述する。

そもそも消費税を年金の財源にするならば、年金の財源不足の度に消費税が増税され、政策に制約が出ることになる。年金の財源は年金保険料で賄うことがそもそもの基本ではないだろうか。年金保険料を抑えることで企業と個人の双方の負担が減るように思われるが、消費税で賄う前提であれば企業の負担のみを減少させるまやかしではないだろうか。この点を踏まえて、小生は消費税の福祉目的税化も反対の立場でいる。従って、今、与党が消費税引き上げ時期について明示を拒む理由もある意味、正しいお考えている。

消費税減税が貯蓄にまわる可能性について、公共投資の効果よりは消費税減税の効果の方が高いと考えている。最近、野党でさせ消費税減税に言及しなくなった。消費税を上げる前提で物事が進んでいる証拠であり、この点を考慮すると、日本の将来は暗いと言わざるを得ない。

恐らく、皆さんの最も興味のない記述になったものと思います。年明けまで相場はお預けであることや、予想できることが全て現実となったことで、記載ネタに困った上でのこととご理解頂ければ幸いです。

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日米同時ゼロ金利政策導入(麻生総理に捧ぐ)

12月10日発売のビックコミック連載のゴルゴ13で、サブプライムローン問題が採り上げられました。来る12月25日にその後篇が発売になるようです。麻生総理におかれましては、これを読んでよく勉強して頂きたいと思います。尚、実態は劇画上のフィクションを遥かに凌駕していますので、その点を理解しておいてください。

□ 米政策金利は0~0.25%、日政策金利は0.1%

米国FOMC(12月17日)で、政策金利(FF金利誘導目標)を0~0.25%(従前1.00%)へ大幅に引き下げられた。更に声明で『持続可能な経済成長の回復と物価安定のために利用可能な全ての手段を動員する』を表明。

日銀政策決定会合(12月19日)で、政策金利(無担保コールO/N誘導目標)を0.1%(従前0.3%)へ小幅に引き下げられた。更に『中央銀行としてなし得る最大限の貢献を行っていく方針』を表明。

日米中央銀行は共にCP買い切りを実行することも表明(FRBはMBSの買い切りも実行)。日銀においては国債買い切り額を増額、FRBにおいては国債買い切りを検討することを表明。何れも非伝統的金融政策である量的緩和の分野に足を踏み込んだ。

□ 金融政策に関する私見

前回記載した『沈む経済、そして世界中の政策金利はゼロに収束』で日米政策金利が何れゼロとなることを予想していた。しかし、その時期は1月と考えていたため、思いの外、早期の実現となったことが少しサプライズであった。

一般的に中央銀行が早期の政策対応をすることは、市場にとって好ましいことであるが、現状小生はそとは考えていない。小生が利下げを1月と読んだのは、非伝統的金融政策導入に抵抗感があるため、伝統的金融政策の最後の砦であるゼロ金利政策導入が遅れると見たからである。しかし、余りの状況の悪さとかつての日銀の量的緩和導入が遅かったことを憂慮してのことであろう。つまり、世の中が思ったよりも悪かったから遅ればせながら政策対応をしたということであり、ビハインド・カーブ・リスクを負っていると考える。

しかし、救いがない訳ではない。かつての日銀が実行してきたことを早期に行ったため、一段の悪化に対して、更に踏み込んだ政策対応が期待できるようになったと思う。勿論、金融政策のみでは限界があり、政府による財政政策との両輪で行う必要があるため、諸手を挙げての楽観論を主張することはできるものではないが、行き過ぎた悲観論の後退にはつながることであろう。

更に踏み込んだ日本の金融政策対応への予想としては

  • 買オペ対象を国債から公共債(地方債・政府保証債)へ拡大
  • 株式購入の拡大
  • 証券化商品(特に不動産関連)の資金流動化(レポオペ)

を想定している。また、財政政策としては、公的金融機関(政策投資銀行)を介して間接金融の拡大をイメージしている。日本の銀行が反対するであろうが、日本の銀行が過小資本に陥っている中で直接金融が機能しない状況となっており、企業側への資金供給を確保することは不可欠であると考えている。

残念ながら何れも抜本的な政策ではなく、対処療法に留まる。そもそも、負債を拡大することで企業業績や景気を浮揚させることは有効な手段であるが、資本が過小であること(クレジット面での脆弱性を抱えること)を背景に好不況の振れを拡大させるに過ぎない。今行っているのは、民間が拡大した負債を如何に政府や中央銀行が拡充するかということであり、底支え効果はあるが、浮揚させる効果はない。このため、相場の上昇はテクニカルな反発に限られることを肝に銘ずることが必要と思われる。

小生の記載は麻生総理にとって難しく、理解されないとは思いますが、漫画以外でも勉強して欲しいと思います。他の皆様におかれましては、世の中が少し改善したということで来年1月以降の相場参加の現実感が増したことをご報告致します。最近の記載は日本経済との名に恥じないと思いますので、閲覧の減少は気にしません。本当は市場への影響を記載すべきなのかもしれませんが、最近は経済=市場と言えない面があり、ミスリードしそう(感じているのは意外と円高には振れない可能性)ですので少し控え目に記載して行くことを考えています。

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沈む経済、そして世界中の政策金利はゼロに収束(不況対策に余念のない方に捧ぐ)

最近、市場解説の記事が多く、経済環境についてほとんど記載していなかったため、これを採り上げます。初めに結論を述べますと、少なくとも日米においては政策金利がゼロに収束することが見込めるほど、経済情勢が悪化しています。既に周知のことではありますが、纏めになれば幸いです。

□ 米国雇用統計(12月5日発表)

悪い悪いとの認識は誰しもが持っていたと思われるが、ここまで悪いと予想した者はいないのではないか。

11月非農業部門雇用者数が前月比▲53.3万人(予想▲34万人)、同時に10月の同数が▲32万人(従前▲24万人)へ、9月の同数が▲40.3万人(従前▲28.4万人)へとそれぞれ大幅に下方修正された。単純に計算してこの3か月で▲125.6万人の雇用が喪失したことになり、今後の個人消費等への悪影響は避けられない情勢となっている。

これを受け、PIMCOモハメド・エルエリアンCEOは米国10-12月期GDPが前期比年率▲4~▲5%の見通しを示しているとの報道(Reuters)や、米プライマリーディーラー16社すべてが次回FOMC(12月15・16日)で0.5%以上の利下げ(内3社は0.75%利下げ)を予想しているとの報道(Reuers)がされている。現在のFF金利誘導水準は1%であるため、早晩FF金利がゼロに近接することは想像に難くないだろう。

□ 流動性の罠

米国の政策金利がゼロになると、日本人で米ドル資産を持とうとする人間は皆無となるだろう。その点から見れば、円高になるか、日本の金利がゼロになるかという方向性が見出され、円高不況の大合唱の下、日銀も政策金利をゼロに誘導することになるだろう。

政策金利がゼロになると、経済学の教科書である”流動性の罠”を思い出す人が多いだろう。流動性の罠についてWikipediaは
流動性の罠(りゅうどうせいのわな、liquidity trap)とは、金融緩和により利子率が一定水準以下に低下した場合、投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となり、通常の金融政策が効力を失うこと。
と述べている。

簡単に言えば、金利はゼロ以下にはできないため、金融政策による景気底支えはできなくなるということである。このため、ケインズ経済学においては財政政策の有効性を主張している。同じくWikipediaには以下のコメントが載っている。
反面、クラウディングアウトの効果はゼロとなり、財政政策は完全に有効となる

※クラウディングアウトとは、財政政策に伴う国債による資金調達が市場金利を上昇させ、景気にマイナス効果を与えること

私見であるが、米国オバマ政権や麻生政権が行おうとしている財政政策の効果を疑っている。それは正しくクラウディングアウトの効果によるものと考えている。

現在の景気悪化は金融の悪化の延長線にあることは言うまでもない。金融環境の改善がない中で大型公共投資を強行したとすると、民間の資金供給を圧迫する可能性が高いのではなかろうか。確かにFRBや日銀の政策金利はゼロ近傍であるが、実際の借入金利はこれら安全利子率にクレジット・スプレッドを付与したものであり、クレジット・スプレッドの拡大を促す(その結果貸出金利の上昇)ことを危惧している。

実際、日本の金融危機において、金融機関は民間への貸し出しを増加させることはなく、国債への投資に傾斜して行った。成果主義の米国社会で日本的な公務員投資に傾斜することはないとの意見もあるかもしれないが、その危険性はそれ程小さなものではないのではないか。

そもそも米国は官民合わせると巨大な赤字を抱える国であり、クラウディングアウトが発生しやすい。その赤字を抱えた中でオバマ政権は金融の正常化と公共投資による経済の浮揚という二つの課題を克服する必要がある。

これに不安がない、と言い切る方がいるだろうか。政策金利がゼロになった時、株価下落と円高が本当の意味で始まると考えられないだろうか。

最近、小生よりも世の中の方が弱気論調が強くなっているため、そろそろ強気への転換時期が近づいていると思います。しかし、余りにも情勢が悪いため、もう少し様子見することが良いと考え、今まで通りの記載に終始しています。前々から言っていることですが、年明けからの状況変化を見極めてからということをお勧め致します。

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