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管理組合がすまい・る債投資を行っているマンションの価値は低い?

 すまい・る債(住宅支援機構発行のマンション管理組合の修繕積立金専用債券)の広告がYahooバナーにあることを見かけました。時同じくして、小生保有のマンションですまい・る債への投資が検討されています。10年国債で運用しているものをすまい・る債と併用運用すればリスクが軽減されるという理由を、そのマンション管理組合の専門委員会の結論となったとのこと。余りに素人である考え方に驚くと共に、住民の投資知識の低さを思い知りました。本タイトルにおいては、10年国債とすまい・る債の比較を行い、すまい・る債に投資するメリットがないことを示したいと思うものです。

□ すまい・る債と国債を6パターンに分類し考える

 双方の運用の前提として、修繕積立計画において償還日以降に資金使途が発生するものの、大災害が発生しマンションに損害が出た場合にはその段階で途中解約し、資金化するものとします。この前提から『大災害なし』『大災害発生』の2つのパターンを想定(大災害無しの場合は満期まで保有)。もう一つの前提として、債券保有後の金利の動きにおいて、『金利上昇』『金利横ばい』『金利低下』の3つのパターンを想定。つまり、本段の6パターンとは大災害と金利の想定の組み合わせのことである。

 ちなみに、2014年2月時点の計算論拠とし、国債利回りを0.6%、すまい・る債を0.337%というようにスタート時の利回り比較で国債利回り>すまい・る債利回りとします。

 以上を踏まえた6パターンにおけるすまい・る債と国債の利回り比較は以下の通り。

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 この通り、国債利回りがすまい・る債利回りを下回るのは金利上昇かつ大災害発生の時のみとなります。

□ 簡単な金融工学による分析
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 前段のものを数値化したのが上記の表である。前提として金利の確率を『上昇』50%・『横ばい』25%・『低下』25%、大災害の確率を『なし』95%・『発生』5%。 国債について金利上昇時2%(かつ大災害発生時飲み影響)、金利低下時0.4%とし、すまい・る債の途中解約の1年間利回りが0.017%とした上で、これらの発生時期を1年後とした。尚、以降10年間の運用に揃えるため、大災害発生時の利回りを10年で割り算している。

 前提において、大災害の発生確率を高めにするなど、国債運用にとって不利な条件を加味して計算した。それでも国債利回りの方が高くなる結果となった。念のため付け加えるが、大災害の発生確率がもっと高い場合にどうするのかという質問があるだろう。これについては、損害保険の有効性が増すため、損害保険を組み合わせれば良くなるという回答を用意している。では、金利上昇が2%ではなく10%を遥かに上回る場合はどうか、と聞かれれば、国債の運用額を例えば75%とし、残り25%を預金で保有することで全体の期待値がすまい・る債を上回るという回答を用意している。

□ すまい・る債での投資分散効果で安全?

  専門委員会は、『国債単独で運用するよりもすまい・る債と併用した方が投資分散の効果でリスクが軽減できる』ということを掲げている。しかし、小生は、「カントリー・シーリング」という考え方でこれを否定する。カントリー・シーリングとは、その国に属する発行体の格付けが国の格付けを上回ることができないという考え方のこと。国の信用力が棄損すると、グローバル企業で日本経済に影響しないような企業(トヨタや任天堂などの限られた企業)出ない限り、企業の信用力にも悪影響を与えるという考え方。住宅支援機構は日本政府系の団体であること、更にはその資金繰りの面(短期調達、長期貸出の形)から、金利が上昇すると財務体質が悪化することを考慮すると、冒頭の専門委員会の意見はこの点を無視しているということとなる。

 更に加えると、すまい・る債には明確な政府保証はない(暗黙の政府保証という)、解約時に機構の審査があるなど、不安要素にはこと欠かない。勿論、デメリットを知った上でメリットが大きいと投資することを否定しないが、小生にはメリットがないとしか思えない。

□ すまい・る債よりも有望な投資先=節電

 すまい・る債を検討するよりも有望な投資として節電投資がある。具体的にはLED化などである。節電投資の目途される回収期限5年の投資とすまい・る債投資を比較する。

 最初に1000万円を投資、回収期限5年なので1年に200万円の節電(電力料金が少なくなるということを受け取りと認識)が発生することとなる。これを10年の期間でみると、10年の合計は2000万円(1000万円の利益)となる。これを利回り換算すると、年率10%となる。

 一方、すまい・る債1億円の10年間の元利合計は1億+337万円(年率0.337%源泉税控除前)である。つまり、すまい・る債に投資する位ならば、一生懸命、節電を考えた方が良いということとなる。リスクを別途考慮するべきかもしれないが、タワーマンションでない広い日当たりの良い屋上を抱えるマンションは太陽光発電を検討した方が良いのかもしれません。

 少なくともハロゲン電球などの電気代がかかるものを放置する一方ですまい・る債という投資効率の悪い投資を行うマンションの価値は低いと言えるのではないか。

□ 終わりに

 小生の保有するマンションでも同様の説明をしましたが、委員のレベルが低く、この話が理解できないようで、自説(すまい・る債が有利)を繰り返し主張しています。以上の話は専門的で素人に理解できないと言う人がいるとは思いますが、少なくとも高校生レベルで習う内容であり、優秀な小学生であれば理解できる内容であるため、大の大人が理解できないということであれば恥じた方が良いと思います。

 失礼を承知で申し上げると、だから日本人の投資知識は中学生以下と言われるのだと思います。

 

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コメント

国債金利が上昇した際には、比較低金利の保有国債時価は下がります。
悪しくも、その折りに修繕積立金取崩しの必要が生じたら・・・。
国債運用での大きなリスクがここにあります。
すまい・る債に、このリスクはありません。
見落としですね。

>(管理者追記) 金利変動リスクについては簡単にシュミレーションしている通り、運用期限と金額のバランスでコントロール可能です。ちなみに、修繕積立金の取り崩しが必要であることを踏まえて、手元現金(預金)比率を高めるなど、対応は可能と考えています。

投稿: ashima | 8月 27, 2017 07:17 午前

国土交通省が公表してる平成25年度マンション総合調査結果(平成26年4月23日公表)の213頁によれば、マンションの修繕積立金を国債・地方債・公社債・投資ファンド(=すまい・る債は除く)で運用してる所の比率はわずか3.0%です。これらは御説のとおり、利回りがすまい・る債よりも概して有利なはずですが、証券会社との取引を要すること(理屈上は銀行も取り扱うが、実際には、億円単位くらいでないと困難)、現状「法人登記がない管理組合の口座開設不可」としてる証券会社が多いこと、投資する国債等の銘柄選定・償還対応等があり、預貯金等に比べ理事長の負担が大きいこと、そしてなにより、当該理事長個人にとって見返りとなる利益分はわずかなため、理事長が組合の利益のために熱心に働くよりはむしろ、ほぼ何もせずに任期を終えようという「護送船団気味の運営」に陥りがちなことが、問題と思います。

これの打開には、結局、「コペルニクス的転回」が必要で、各区分所有者が有する土地・建物の持分(こちらは登記されています)イコール管理組合への抽象的持分(こちらは登記されません)の関係を打破して、後者は「運用に熱心な人の持分はウサギ跳びに増え、そうでない人の持分はカメの置き去りを食う」ようにするしかありません。つまり「全員がリスクを取りたい人ばかりではない」のなら、「リスクをとってもいい人だけ」の特別会計を作って運用する(=もし損が出たらその人たちだけ責任を取ってもらうが、その代わり、リターンが出たら、その人たちだけその利益を大規模修繕時の個別負担金の計算上減額する、等の形で還元する)方が、はるかにましだと思いますが?
勿論、株式投資信託等での運用にはリスクを伴いますから、参加者は全体の少数にとどまるでしょうけど。

(管理人より追記)
 管理組合という組織体において、修繕積立金の管理については運用というよりもストックとすることが重要と考えます。このため、利回りを稼ぐことよりも安全性を重視すべきと考えます。安全性を重視すると言うと元本保証の金利ゼロの決済性預金での運用ということとなりますが、現在の金利がゼロに近いところではそれでも構わないと思っています。例えば物価上昇率が2%程度まで上昇し、修繕積立金がインフレで目減りする状況になれば、その目減りを減らすため、1~2%を目標に運用を考えるということではないかと。

投稿: 麻垣康三 | 5月 19, 2018 10:42 午前

(管理人より)
 『「地震保険」について』の記述は、元記事の主旨からはずれているため、削除させていただきます。

投稿: | 5月 20, 2018 07:58 午前

なるほど、組織体だから「一番保守的な考えに合わせろ」という護送船団擁護の御立場ですね。そうすると、修繕積立金(もちろん、将来の大規模修繕に備えてのものです)が、インフレによる工事費高騰で不足したら(現に、高騰してます!)、積立金の不足は、そのインフレ後に一括で各区分所有者から徴収すればいいという、方針ですね。

区分所有者全員がそれで納得、なら、言うことはありません。しかし、一括で〇〇万円も払え、と言われたら、「地震や火災には保険会社を儲けさせて備えるのに、インフレには何の備えもしなかったのか」と歴代理事長の善管注意義務違反を問われる可能性もあります。そのときは、どうなさるのでしょう?(訴訟リスクに備える保険に管理組合で加入するんでしょうか?ますますコストがかかります)。

考え方として、「火災より地震より、インフレが怖い」区分所有者もいるでしょう。これをそもそも多数決で押し切るのが合目的的なのか、それとも、この部分はもう「コペルニクス的転回」して、あたかも個別元本を持ってるような形に工夫するのが合目的的なのか、ということです。管理組合の持分は、土地建物の持分と違って登記もなにもされてないんですから、土地建物の持分と違ってるというありかたは当然可能でしょう。 

投稿: 麻垣康三 | 5月 21, 2018 08:26 午前

ついでですが、管理人様の御意見
>委員のレベルが低く、この話が理解できない

どころか、普通の管理組合の理事長あたりは、「証券会社と国債や地方債等の銘柄(利率・年限、価格等〉をめぐって、営業員と折衝する」レベルにさえ、到底、達していません。これでは、「国債・地方債等とすまい・る債」の比較どころではなく、せいぜい、「普通預金とすまい・る債の比較」が関の山でしょう。現実は、お粗末そのものです。

かえって、投資信託の積立てレベルなら、まだマシかもしれません。価格変動等のリスクは、これをとることを承知で特別会計への参加を希望する区分所有者が負う、としておく限り、「管理組合」という人格なき社団自体が負う特段のリスクはありません(実際損が出た場合の、当該参加者への追徴が可能か否か、というリスクのみですが、これは、普通の管理費や修繕積立金の未収リスクと同程度でしょう)。管理組合の負うリスクをなくしてある以上、「私はリスクをとりたくないから不参加だが、他の区分所有者も同様に、参加すべきでない」と主張するのは、それこそ、他の区分所有者にとっては、余計なお世話でしょう。

投稿: 麻垣康三 | 5月 21, 2018 03:53 午後

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